うーん……繊細さに欠ける……。

 絵本を好きになって欲しくて、うちにはたくさん絵本が用意してある。

 イラストレーターという夫の仕事柄、もともと夫所有の絵本があったのだが、夫は我が子のためにさらに色々と調べてコレクションを増やしていた。

 私も夫も、我が子に読み聞かせをする日を待ちわびて、読み聞かせる気満々で、チビが産まれる前からスタンバっていたのだ。

 しかし、チビが今一番好きなのは、音楽に合わせて身体を動かすことのようだ。

 音楽を流すと、リズムに合わせて身体を揺らして、オリジナルのダンスを踊り始める。

 踊っているうちにテンションが上がってきて、キャッキャと笑い出す。

 そんなおり、保育園で初めてリトミックの授業があった。

 お迎えに行くと先生が、

「すごかったですよー! ノリノリでカエルさんとか、アリさんとかハチさんの動きを上手にやってましたよ!」

 と興奮気味に話してくれた。お絵描きの授業のあった日に、

「一生懸命ペタペタしましたよー」

 と言ってくれたのとは、明らかにテンションが違ったので、やはりチビは工作系の授業よりも、歌い踊る授業の方で本領発揮していると思われる。

 クラスメイトの中には、工作系で頭角を現している子もいるに違いない。

 そろそろいい時期だな、と思った私は、志村けんさん演じる「変なおじさん」ダンスを披露してみた。

 するとどうだ。

 チビは目を輝かせて駆け寄って来た。

 そして満面の笑みで真似し始めるではないか。

 もちろんクオリティーは低い。

 できるのは最初の、手を叩いて伸ばすところだけだ。

「へんなおーじさん」

 の「さん」のところで「たん!」と声を合わせて、ピンっと片手を伸ばす。数回それを繰り返すと、ひゃひゃ~っと大笑いしながら後ろに反り返って尻をつく。

 すごい。1歳児にも通用する面白さ。

 さて、ちょっと疲れたところで絵本を手にし、チビを膝に乗せ、読んで聞かせてみる。

 2ページ読んだところで、

「おーちーまい!」

 と本を閉じられる。

 絵本に関してはこれが続いている。

 待とう。

 きっと、もうちょっと大きくなったら、物語に興味を持つ日が来ると信じて。

 今は志村さんのスキルを借りているが、私の役者のスキルが役立つ日がきっと来る。

 その時には読もう。全力で読もう。

 役者生命をかけて読もう!!

著者プロフィールを見る
水野美紀

水野美紀

水野美紀(みずの・みき)1974年、三重県出身。女優。1987年にデビュー。以後、フジテレビ系ドラマ・映画『踊る大捜査線』シリーズをはじめ、映画、テレビドラマ、CMなど、数多くの作品に出演。最近では、舞台やエッセイの執筆を手掛けるなど、活動の幅を広げている。2016年に結婚、2017年に第一子の出産を発表した

水野美紀の記事一覧はこちら