■紙選びで印象は ぜんぜん違うものになる

 ハイコントラストでメリハリをつけてインパクトを生む仕上げもある。現在、本誌でモノクロプリント部門の選者を務めている中藤毅彦さんの作風はまさにこれ。見ている側が「大丈夫なの?」とドキドキするような被写体を近距離から撮るアプローチは荒々しい仕上げにすることで作品が引き立つ。階調を出すにしても、ハイコントラストに仕上げるにしても、どちらがよいとか悪いとかではなく、内容にふさわしいものを選ぶことが重要である。これが一致しないと気持ち悪く、安易なモノクロと評される可能性も高い。

 ちなみに四隅を落とす仕上げは中央部にある主題を視覚的に誘導する効果をねらったものだ。行為そのものは悪くないが、やりすぎているものが多いので自然な印象を与えるぐらいにとどめたほうがよいだろう。また、同じ四隅を意識するにしても避けたいのが白とびである。どのフォーマット(アスペクト比)でも画面が四角く見えないのは写真としてあまりにも不格好。情報がない場合はその部分に薄く色をつけるなり、罫線を入れたりしてごまかしたい。写真の仕上げにおいては「四隅を落とす」よりも「四隅を出す」ことのほうがとにかく大切。暗室経験者はこれを避けるため、撮影時に白とびしそうな部分を外してフレーミングをしている。

 ポイントの最後は紙選び。これはカラー、モノクロを問わずいえることで、個展でもその差は歴然。プリント応募のコンテストにおいても、印象はぜんぜん違うものになる。フォトコンテスト応募作品の多くは光沢(高光沢)かマットだが、選択肢がたくさんある現在、わざわざ内容にそぐわない用紙を選ぶのはもったいない。用紙選択ミスにより、黒の締まりがない、階調も出ていない、持った感触がペラペラなど、よい部分を見つけるのが難しい作品もある。「絵柄だけを見てほしい」「あれこれ用紙を買うとお金がかかるから」と言われると二の句もないが、用紙へのこだわりも評価対象になっているとしたらどうだろうか。審査員が写真家ならば、作者の作品に対する扱いや被写体への思い、他人に作品を見てもらう姿勢などもすべてプリントから伝わってくる。

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モノクロと向き合えば写真の世界が広がる