全例に薬物治療が必要というわけではないですし、薬物治療が望ましいと考えられる場合でも見立てに応じて推奨される治療薬を提案します。外来治療では本人の同意が原則(入院治療でも可能な限り同様)ですので、予測される効果や副作用、中長期的な目標、内服に対する不安などがあれば担当医に相談してみてください。それでも疑問が拭えない場合、別の精神科医を受診し意見を聞く“セカンドオピニオン”利用の検討も手かもしれません。

 また、Aさんのご相談からは判断できませんが「治療が必要でも、出産を強く希望している」「仕事だけは絶対に休みたくない」など、希望はケースによってさまざまです。もちろん、すべてが希望どおりにできるわけではありませんが、精神状態が切迫し緊急を要する状況でなければ患者本人の希望を可能な限り尊重し、優先順位は柔軟であるべきだと考えます。

 今まで想像もしていなかった精神科受診。どのようなところかわからず「言われたとおりにしなくてはいけないのでは」といった不安があるのかもしれません。実際には、よほどの状態でない限り、薬物治療の有無にかかわらずご自身の同意によって治療方針が決定されます。軽症であればあるほど柔軟に対応できる可能性がありますので、早めに一度受診してご相談されることをお勧めします。

○大石賢吾(おおいし・けんご)/1982年生まれ。長崎県出身。医師・医学博士。カリフォルニア大学分子生物学卒業・千葉大学医学部卒業を経て、現在千葉大学精神神経科特任助教・同大学病院産業医。学会の委員会等で活躍する一方、地域のクリニックでも診療に従事。患者が抱える問題によって家族も困っているケースを多く経験。とくに注目度の高い「認知症」「発達障害」を中心に、相談に答える形でコラムを執筆中。趣味はラグビー。Twitterは@OishiKengo

著者プロフィールを見る
大石賢吾

大石賢吾

大石賢吾(おおいし・けんご)/1982年生まれ。長崎県出身。医師・医学博士。カリフォルニア大学分子生物学卒業・千葉大学医学部卒業を経て、現在千葉大学精神神経科特任助教・同大学病院産業医。学会の委員会等で活躍する一方、地域のクリニックでも診療に従事。患者が抱える問題によって家族も困っているケースを多く経験。とくに注目度の高い「認知症」「発達障害」を中心に、相談に答える形でコラムを執筆中。趣味はラグビー。Twitterは@OishiKengo

大石賢吾の記事一覧はこちら