燦鳥ノムのコンテンツに対するコメントを見ると、クオリティーの高さや、サントリーという大企業が本気でVTuberの活用に取り組んでいることに対する驚きと賞賛の内容が多い。これまで特に意識することもなく遠い存在に感じていた有名企業が、自分と同じ視点で遊び場を提供してくれたことで一気に“身近な企業”に変わった視聴者も多いのではないだろうか。

 花王『ワイドハイター』は「月ノ美兎」とコラボレーションし、昨年夏にリアルイベントを実施した。ターゲットは“推し”のキャラクターが描かれたTシャツを着て同人誌即売会などのイベントに行く人々。夏のイベントでは“コミケ雲”なるものが発生すると言われるほど来場者の熱気と発汗が会場を満たし、熱い思いは残念ながら臭いとなってTシャツに刻まれる。そこで『ワイドハイター』はTシャツを洗濯している間に月ノ美兎と個人面談ができるというイベントを開催し、参加者にとって『ワイドハイター』を“マイブランド”と認識してもらうきっかけを作った。

 そうした盛り上がりを見せる中、地上波テレビデビューを果たしたVTuberもいる。輝夜月は日清食品『U.F.O.』のCMに登場し、地上波とは思えないような自由でカオスな作品で幅広い世代に衝撃を与えた。VTuberの草分け的存在であるキズナアイは日清食品『カップヌードル 味噌』とブルボン『チーズおかき』の2社のCMに起用されている。CM総合研究所が実施しているCM好感度調査でこれらのCMに真っ先に反応したのは10,20代の若年層だが、驚くのは40,50代でもキャラクターの名前を認識している消費者が少なからずいるということだ。
 
 かつては“有名人”や“人気タレント”といえば、テレビに出ている人を指すことが大半だったが今はそう単純ではないらしい。小学生~高校生だとテレビタレントよりもYouTuberやTikTokerの方が憧れの存在だったりする。テレビで育った世代には違和感があるかもしれないが、昨年の「NHK紅白歌合戦」に出場した米津玄師やDAOKOももともとはインターネット中心に活躍をしていたことは有名で、テレビとインターネットを分断してとらえたり、メディアとしての優劣をつけて比べたがるのは時代錯誤なのだとつくづく感じさせられる。

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成功するのは一握り