しかし、世界のトップを見渡せばスイングコーチの存在が欠かせないものであることは明らかだ。世界ランクトップのダスティン・ジョンソン(米)にはブッチ・ハーモン、同2位のジャスティン・ローズ(英)にはショーン・フォーリー、同3位のブルックス・ケプカ(米)にはブッチ・ハーモンの息子でもあるクラウド・ハーモン3、同4位ローリー・マキロイ(北アイルランド)にはマイケル・バノン、そして同5位のジャスティン・トーマス(米)の場合は父がスイングコーチを務めるが、パッティングコーチとしてマット・キレンがついている。

 そして、マスターズで見事な復活優勝を遂げたタイガー・ウッズ(米)は、今年は特定のコーチを置いていないが、これまでハーモン、フォーリーという一流のコーチをつけ、昨年まではクリス・コモにアドバイスを仰ぎメジャー優勝への土台を作った。さらに、メジャー連覇を目指す今月の全米プロゴルフ選手権では、キレンをパッティングコーチにつけるとされている。

 このように、彼らはコーチ変更などがあるものの、基本的には教えるプロに自身のスイングをチェックしてもらっている。トーマス、全米プロでのウッズのようにパットだけのコーチを雇うことも日常的だ。

 彼らがコーチを雇うのは、本人では気がつかない、動画を確認しても見過ごすようなことを指摘され修正でき、そして改善できるから。同時に、本人たちの体格にあったスイング指導法にも長けているので、必然的にケガの予防にもなる。

 ちなみにウッズのコーチだったコモは、バイオメカニクスの博士号を持つ。バイオメカニクスとは、端的にいうと身体運動の動きや力を研究する学問。つまりコモは、ケガしにくいスイングを指導できるということ。あれだけ腰や膝のケガに苦しみ手術を四度も受けたウッズが復活したことを考えれば、「その道のプロに見てもらう」ということは、当然のことのように思える。

 今、石川に必要なことは、まず復活の前に完全な身体で復帰すること。とはいえ、故障の治癒だけ重視し、ゴルフをしないというわけにもいかないだろう。ならばその道のエキスパートに指導を仰ぎ、身体を治しながら石川に合ったスイングを身につければ良い。そのためには、まず「コーチは不要」という思考の180度転換が必須。気持ちの変化は、そのまま復活への足がかりになるだろう。