巨人の上原浩治 (c)朝日新聞社
巨人の上原浩治 (c)朝日新聞社

 今年のプロ野球で密かに注目を集めている戦術がある。本来リリーフの投手が先発し、短いイニングで第二先発に繋ぐ「オープナー」という起用法だ。昨年、MLBのレイズが本格的に導入したことでその言葉が広まり、NPBでもここまで日本ハムとDeNAがこの手法を積極的に採用している。4月21日には国吉佑樹(DeNA)が1回4失点、30日にも進藤拓也(DeNA)が3回7失点で降板するなど失敗するケースも目立つが、5月1日には中継ぎ登板から中二日で先発した堀瑞輝(日本ハム)が2回1/3を1失点でしのぎ、チームも7対2で勝利をおさめている。そこで今回は先発や大事な場面のリリーフでは実績を残していないものの、オープナーで起用すると力を発揮しそうな投手をピックアップしてみたいと思う。

 まずはセ・リーグで面白そうなのが中村恭平(広島)だ。昨年までプロ入り8年間で23試合に先発しているものの勝ち星はわずかに2つに終わっている中堅のサウスポーだ。昨年はリリーフで8試合に登板したものの投球回とほぼ同数の四死球を与えており、防御率は7点台という成績に終わっている。しかし今年は敗戦処理で結果を残し、5月5日には初ホールドをマーク。翌6日には2回を投げて4奪三振と好投を見せてチームの勝利にも大きく貢献したのだ。緊迫した場面ではまだコントロールに不安が残るものの、持ち味である150キロ前後のストレートは勢いを増しており、スライダーでよく腕が振れるようになってきたことも大きなプラス要因だ。長いイニングを考えてセーブせずに、初回からどんどん腕を振って投げることができれば、上位打線を相手にも通用する可能性は高いだろう。左投手のリリーフはフランスアとレグナルトがおり、岡田明丈と九里亜蓮の開幕ローテーション投手二人が二軍調整中という台所事情を考えると、ローテーションの谷間で中村をオープナーで起用してみても面白いのではないだろうか。

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西尾典文

西尾典文

西尾典文/1979年生まれ。愛知県出身。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究し、在学中から専門誌に寄稿を開始。修了後も主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間400試合以上を現場で取材し、AERA dot.、デイリー新潮、FRIDAYデジタル、スポーツナビ、BASEBALL KING、THE DIGEST、REAL SPORTSなどに記事を寄稿中。2017年からはスカイAのドラフト中継でも解説を務めている。ドラフト情報を発信する「プロアマ野球研究所(PABBlab)」でも毎日記事を配信中。

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中日の右腕も面白い存在