その後、チーズによっては塩を加えたり、青カビや白カビといった真菌を使ったりしてさらに熟成を重ねていく。代表的な青カビがPenicillium roqueforti、白カビがPenicillium camembertiだ。ちなみに、ペニシリウムは抗生物質のペニシリンを作るので有名だが、これはP. chrysogenumによる。だから、ペニシリンアレルギーの人もチーズを食べても大丈夫。ここ、試験に出ます(うそ)。

 また、青カビは病原性がほとんどなく、まれに免疫抑制者の感染症の原因となるP. marneffeiくらいで、これは日本には存在しないとかんがえられる。ちなみにちなみに、Penicilliumの和名が「アオカビ属」なのだが、青くない、白いものもある。白カビチーズを作るP. camembertiは「アオカビ属」に属するというややこしさだ。さらにちなみに、生物学的には「シロカビ」というのは存在しない。その他の真菌(カビ)もウォッシュタイプなど、いろいろなチーズの熟成に貢献している。

■こってりした食事を取るフランス人が太らない理由
 
 チーズはワインと非常によく合う。多種多様なチーズがあるが、ワインと合わないチーズは存在しないといってよいくらいだ。赤ワインにも白ワインにも、スパークリングワインにも甘口、辛口の酒精強化ワインにもよく合う。

 フレンチ・パラドックスという言葉がある。フランス人はバターや生クリームたっぷりの食事を取っているしワインもたくさん飲んでいるのに健康だし、太っていない。肥満が社会問題のアメリカなどでこの一見すると矛盾する現象を「フレンチ・パラドックス」と呼んでいる。

 フレンチ・パラドックスはなぜ起きるのか。その理由は、フランス人がワインを飲むから、という説があるが(後述)、実はチーズもフランス人の健康に寄与しているのでは、という意見もある。チーズは体によい、という説だ。チーズのような乳製品の摂取で心臓血管系の死亡率や発症率、脳梗塞が減るのでは、というメタ分析が発表されている。カロリーが高く、塩分が多いチーズは従来は心臓によくない、という見方が多かったが、もしかしたら逆なのかもしれない(Guo J, Astrup A, Lovegrove JA, Gijsbers L, Givens DI, Soedamah-Muthu SS. Milk and dairy consumption and risk of cardiovascular diseases and all-cause mortality: dose-response meta-analysis of prospective cohort studies. Eur J Epidemiol. 2017 Apr;32(4):269–87、Chen G-C, Wang Y, Tong X, Szeto IMY, Smit G, Li Z-N, et al. Cheese consumption and risk of cardiovascular disease: a meta-analysis of prospective studies. Eur J Nutr. Epub 2016 Aug 12)。牛乳やヨーグルトなどその他の乳製品も同様の理由で再評価されつつある。
 

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チーズには健康リスクも