その息子さんも切り絵とイラストで白鵬を描いたが、小さい頃から白鵬を描くのが大好き。場所前になると「優勝するように」と願いを込めて白鵬の絵を描いてきた。

もう一つ、ユニークな作品が大相撲の「呼び出しさんの仕事」をズラリ、刺繍した作品。作ったN@rikoさん(ツイッターのアカウントネーム)は、

「呼出しさんに注目してみたら、意外と仕事量が多いし、人に呼出しさんの事を話すと行司さんと混同してたり、あまりちゃんと認識している人が居ないんだなーと思い、何かに表現できないかと思いました。でも絵にしてしまうと、自分の『推し』ばかりになってしまいそうで…。もう少し無機質な感じにしたいなぁと考え、悩んだ末にクロスステッチに辿り着きました」

 という。相撲愛と刺繍表現の融合、N@rikoさんは、毎場所1人ずつ刺繍作品にしているんだとか。

 他の参加者たちも「相撲は描くと画面からはみ出す迫力が出る」「動きがある」「描いていて楽しい」と、ワクワクと相撲絵を描いているが、さらに今年はおすもうさん自身も相撲絵を描いてくれた。

幕内力士で「21世紀のソルト・シェイカー」として大胆な塩撒きで館内を沸かせる照強関は墨絵に初挑戦。一度出展した作品を破棄し、また描き直して出展するほど気持ちを込めてくれた照強関は、化粧まわしをプレゼントしてくれた片岡鶴太郎さんの影響で絵を描き始めたとか。土俵では毎日違う取り口で面白く沸かせてくれるけど、絵を描いて集中して策を練るのかも?

 さらに角界のファッショニスタの異名も持つ石浦関は素描作品をスケッチブックにささっと何点も。味わいある絵は、さすが! その一点が自らの親方、宮城野親方なのが、なんだかジ~ンと感動してしまった。

 現役の関取たちも稽古の合間に立ち寄って、絵を見て楽しんでいる。新しい相撲絵の世界を楽しんでほしい。(和田静香)

■和田静香(わだ・しずか)/1965年、千葉県生まれ。音楽評論家・作詞家の湯川れい子のアシスタントを経てフリーの音楽ライターに。趣味の大相撲観戦が高じて最近は相撲についても書く。著書に『スー女のみかた 相撲ってなんて面白い!』『東京ロック・バー物語』など。