倹約家の妻が、

「そういう時には、消化のいい素うどんを食べて、15分でいいから昼寝したほうがいいのよ」

 と言えば、きっと何かの反論が出るだろうと思います。

 同じように、浮気をした本当のメカニズムなどわかるはずがないのですが、妻が子どもにかかりきりで寂しかったのは事実なので、それを理由として言ったとします。そうすると、それが事実として独り歩きを始めます。冒頭の智花さんは、

「私も、悪かった点があると思うので……」と言っていますが、つまるところ、主に夫が悪いと言っているわけです。同じような状況で浩美さん(仮名、20代後半・アパレル関係)はもっと直接的に、

「寂しいからって、浮気していいと思っているわけ?」

と続けました。

 どちらにしても、話のスタートラインが「理由を知りたい」だったことを覚えていれば、そこから外れていることに気づくはずですが、当事者はそんな余裕がないので、そのまま話が進んでいってしまいます。

 そして本当は理由を知りたいのではなくて、問い詰めたいのではないかということが想像できます。浩美さんはこうもおっしゃいました。

「なぜ自分が不倫に走ったのか、とことん考えてほしい」

 この場合も、とことん考えた結果「不倫したかったから」という理由で納得してもらえるとは思えません。これも自分で自分を問い詰めて欲しい、という話です。つまり、問い詰めることによって、自分の主張をプッシュしたい、自分のことをわかってもらいたいということです。理由を知りたいということと真逆のことだということがわかると思います。

 自分のことをわかってほしいなら、適切なやり方をする必要があります。自分の傷ついた気持ちや怒りを真剣に聞いてほしいのに、相手の理由を知りたいという真逆の言葉を使っていたら、望むようなコミュニケーションが取れないのは当然です。

 では、本当に相手のことを知りたいのならどうしたらいいのでしょうか。それは、英語でいうところの、HowとWhatで質問することです。

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反省させたい「なぜ」で苦境脱出ゲーム化