※写真はイメージです(GettyImages)
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 パートナーの行動に「なぜ?」と疑問を持つことは誰しもあるだろう。そして、聞かれて理由を説明することも。しかし、カップルカウンセラーの西澤寿樹さんはカウンセリングで「なぜ」問いかけることを禁止するという。夫婦間で起きがちな問題を紐解く本連載、今回は「なぜに隠れた本音」について解説する。

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 私のカウンセリングでは、いくつかのNGワードを設定することがあります。夫婦カウンセリングの場合、その筆頭が「なぜ」です。そうすると、「どうして」とか「なんで」と言い換える方がいますが、英語にしたときwhyになるものはすべてNGです。

 最近の本のタイトルや、サイトの記事のタイトルには、「なぜ○○はxxなのか?」みたいなのが多く見受けられます。なぜは、人の注意を引く言葉の一つです。

 理由に思いを巡らすのは、基本的には良いことだとは思います。ほとんどの人が小学校のころから、もしくはもっと前からそういう習慣を教えられています。トヨタ自動車では、何か問題が起こると「なぜ問題が生じたのか?」「なぜその理由が生じたか?」などと、なぜを5回繰り返す「なぜなぜ分析」の実践が知られています。なぜには、世界に冠たるトヨタ式生産方式を支えるほどの大きな力があるのです。

 なのに、どうして「なぜ」というのがNGなのでしょうか?

 もちろん、すべての「なぜ?」がNGなわけではありません。オーディションで一人最終選考に選ばれたとき嬉しさから「なぜ!?」とつぶやくのはOKです。また、2人の関係がうまくいっているときなら「なぜ」と聞くのも一応OKです。しかし、夫婦で何かうまくいってないことを話すときに「なぜ」は禁忌です。

「なぜ夫が不倫に走った理由を知りたい」

 と言って、いらっしゃったのは、夫のことを信じきっていて一回も疑ったことがないという智花さん(仮名、30代後半・専業主婦)です。友人に「あんたの旦那、女の人と手をつないで楽しげに歩いてたよ」と言われたときには全く信じられなかったのですが、夫に突き付けたら、最初は否定していたものの最後には認めたのだといいます。認められたら今度は、「なぜ」が頭から離れなくなってしまいました。

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西澤寿樹

西澤寿樹

西澤寿樹(にしざわ・としき)/1964年、長野県生まれ。臨床心理士、カウンセラー。女性と夫婦のためのカウンセリングルーム「@はあと・くりにっく」(東京・渋谷)で多くのカップルから相談を受ける。経営者、医療関係者、アーティスト等のクライアントを多く抱える。 慶應義塾大学経営管理研究科修士課程修了、青山学院大学大学院文学研究科心理学専攻博士後期課程単位取得退学。戦略コンサルティング会社、証券会社勤務を経て現職

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「なぜ」実は答えがない