しかも、マラソンについては意外と盛り上がらなかった。以前テレビ番組『VS嵐』のアトラクション「クリフクライム」で痛めたという足の不調に耐えながら、それなりに頑張ったのだが、ガツガツしない魅力と、汗や涙が売りの苦行企画とは相性が今ひとつだったようだ。

 とまあ、大ヒット曲が出せず、バラエティでも手詰まりとなれば、だんだんジリ貧になってもおかしくはなかったわけだが――。翌年、彼はさらなる新キャラを獲得する。「北川景子の夫」だ。これにより、七光りタレントから十四光りタレントに進化したのである。

 このとき、連想させられたのは大沢あかねの生き方だった。こちらはプロ野球界の大物・大沢啓二を母方の祖父に持ち「親分の孫」としてブレイク。その後、劇団ひとりとの結婚で「芸人の妻」となり、安定感を増した。ちなみに、彼女が結婚した翌月、祖父が死去。まさに、七光りがうすれようとするタイミングで、別の七光りを手に入れたわけだ。長持ちする芸能人には、一種の嗅覚というか、世渡り上手なところが備わっているものなのだろう。

 もちろん、そういう生き方はほぼ無意識の産物だろうし、ガツガツしないタイプの彼にとってはなおさらだ。それゆえ、美人女優の妻をひけらかすこともしない。この「ひけらかさない」ことこそ「ガツガツしない」ことと並ぶ、彼の好感度を支える両輪なのだ。

 というのも通常、男は知力や体力といった、自分が「持てるもの」を自慢したいものだからである。しかし、彼はおバカキャラを装い、戯画っぽいロックスターを演じ、突然キレたり誰かとケンカしたりすることもない。その平和志向については年の離れた姉と兄を持つ第3子だということが影響しているようだ。前出のコミックエッセイでの姉弟対談のなかで、こんな発言をしている。

「本当お姉ちゃんとお兄ちゃんはよくバトルしてたよね。そのおかげでオレ怒るのはよくないことだって学んだもん」

 また、のろけ方も独特だ。昨年『人生最高レストラン』に出演した際には、妻の手料理について「カレーは宇宙一!」などと絶賛しつつ「夕食を作ってくれる日は朝からほとんど食べない」と、続けた。思わず、それって空腹は最高の調味料ってやつではとツッコミを入れたくなったが、言動がどこかゆるくて人をなごませるのである。

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政治家への道