二つ目の理由として、寒暖差の大きかったことや環境の変化もあげられるでしょう。今年の4月は、朝晩の寒暖差が激しい日もあれば、冬のような寒さが続くかと思ったら、ポカポカ陽気になったりと、体温調節も服の調整も難しく、こうした気温の変化についていけず、体調を崩した方も多かったのではないでしょうか。また、4月から職場が変わった、転職をした、引っ越しをした、など環境の変化があった方はそろそろ疲労がたまってくる頃であり、体の抵抗力も低下しがちだと思われます。

 三つ目の理由として、スギ花粉の飛散量が多かったことも挙げられます。2018年の韓国のソウル大学病院のJeon医師らは、アレルギー性鼻炎をもつ人の粘膜はA型のインフルエンザウイルスが感染しやすいことを報告しています。アレルギー物質によって炎症がおきてダメージを受けている鼻の粘膜からインフルエンザウイルスが感染しやすくなっている可能があるというのです。

 つまり、寒暖差や環境の変化により体調を崩しやすかった4月は、インフルエンザワクチンの効果がちょうど切れてきた頃であり、花粉によって鼻の粘膜が炎症を起こしインフルエンザウイルスが感染しやすい状態だったと言えるのです。

 再流行に拍車をかける可能性があるのが、今回の大型連休でした。海外に行く人もいれば、海外から日本にやってくる人もいます。多くの人が日本国内各地へ移動することから、インフルエンザウイルスが容易に広まりやすい状況だと言えるのです。

 インフルエンザは、再流行がさらに拡大して行く可能性も十分にあります。インフルエンザウイルスは、乾燥していて寒い気候を好むだけでなく、湿度が高くて雨が多い気候も好むことがわかっているからです。このまま流行が続いて梅雨入りしてしまったら、夏にもインフルエンザが流行している、なんてことがあるかもしれません。

 大型連休も終わり、さあ仕事に復帰しようと思った直後、体調を崩してしまったという方は、無理をせず早めに医療機関に相談してみてくださいね。

○山本佳奈(やまもと・かな) 1989年生まれ。滋賀県出身。医師。2015年滋賀医科大学医学部医学科卒業。ときわ会常磐病院(福島県いわき市)・ナビタスクリニック(立川・新宿)内科医、特定非営利活動法人医療ガバナンス研究所研究員、東京大学大学院医学系研究科博士課程在学中、ロート製薬健康推進アドバイザー、CLIMアドバイザー。著書に『貧血大国・日本』(光文社新書)

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山本佳奈

山本佳奈

山本佳奈(やまもと・かな)/1989年生まれ。滋賀県出身。医師。医学博士。2015年滋賀医科大学医学部医学科卒業。2022年東京大学大学院医学系研究科修了。ナビタスクリニック(立川)内科医、よしのぶクリニック(鹿児島)非常勤医師、特定非営利活動法人医療ガバナンス研究所研究員。著書に『貧血大国・日本』(光文社新書)

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