各局の番組で紹介されていた話題の大半は、正直なところ、うんざりするほど似たり寄ったりだった。「平成」という名前の駅、道の駅「平成」、皇居前広場などに人が集まっているという話、市役所や区役所で令和の始まりと同時に婚姻届を出そうと多数のカップルが詰めかけているという話、「令和ベビー」が誕生しようとしているという話、新元号にちなんださまざまなグッズが販売されているという話などが、各局のニュース番組や特番で何度も繰り返し使われていた。

 そんな中で、個人的に最も印象に残ったのはテレビ東京の『池上彰の改元ライブ』だった。平成を振り返って事件があった場所をめぐるバスツアーを行ったり、新時代になって私たちの仕事はどう変わるのかを紹介したり、独自の視点が際立っていた。明らかに他局とは色合いの違う内容だった。

 皇族の人々を紹介するパネルでは、紀子さまのところに「スキーはオーストリア仕込み」、秋篠宮さまのところに「全国から「ひょうたん」収集」などと書かれていた。かつて放送された池上が出演するテレビ東京の選挙特番では「車庫入れが苦手」「事務所でメダカを飼う」など、当確者の意外なプロフィール情報がテロップで表示されることが話題になっていた。今回はそれを皇族にも応用したということだろう。

 テレ東の池上の選挙特番は、独自路線で独り勝ちしていることで有名だ。前述の通りプロフィール情報が凝っているのはもちろん、当選した直後の候補者に対して池上が歯に衣着せぬ質問をするのも痛快だった。他局を寄せ付けないその圧倒的な活躍ぶりは「池上無双」と呼ばれた。今回の改元特番でもテレ東と池上がその底力を見せつけた形となった。

 極めつけは改元時の演出である。改元のちょうど1分前から池上のワンショットに切り替わり、池上が平成の日本を振り返る独り語りが始まった。淡々と落ち着いた調子で言葉を重ねて、最後にこう述べた。

「……しかし、この30年間、少なくとも日本は戦争に巻き込まれることがありませんでした。平和だったわけですね。この平和な日本。今度は経済をデフレから脱却させる。そんな新しい令和を期待します」

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言葉を止めたその瞬間…