日本代表の乾友紀子・吉田萌組 (c)朝日新聞社
日本代表の乾友紀子・吉田萌組 (c)朝日新聞社

「中国に勝たないと世界選手権のメダルにつながらないと思って今回臨んだので、よかったと思います」

 長年日本をエースとして引っ張ってきた乾友紀子は、安堵をにじませた。

 今年のアーティスティックスイミングジャパンオープン(4月27~29日、東京辰巳国際水泳場)のデュエット・フリールーティン(以下FR)では、日本代表の乾友紀子・吉田萌組と中国のジャン・テイテイ、ジャン ・ウェンウェン組の勝負が注目された。前回の2017年世界水泳選手権では、五輪種目の獲得メダルがチームテクニカルルーティンの銅一つにとどまった日本は、今夏の世界水泳選手権(7月、韓国)でメダルを奪還し、東京五輪の表彰台へ弾みをつけたい。目下世界一の強さを誇るロシアは頭一つ抜けており、メダル争いでは中国とウクライナが日本のライバルとなる。

 今回は中国代表としてではなく所属クラブからの参加となったジャン・テイテイ、ジャン ・ウェンウェン組が世界選手権の中国代表に選ばれるかどうかは不透明だが、今年3月のフレンチオープンでウクライナに敗れている乾・吉田は、ここで前回の世界選手権銀メダリストである彼女達を上回りたかった。

 手足が長い双子のジャン・テイテイ、ジャン ・ウェンウェン組はクラシックの曲で優雅に泳ぎ、93.7667をマークした。対する乾・吉田組の演目は「タイムリープ」。過去・現在・未来を移動する様子を表現する、次々と場面が切り替わるルーティンだ。引き締まった表情で登場した二人は高いリフトと細かい足技を見せ、課題だった同調性も克服した泳ぎを披露する。やり切った表情でプールから上がった二人は、電光掲示板に表示された94.2000のスコアを確認し、笑顔の井村雅代ヘッドコーチに迎えられてプラットホームを下りた。

 28歳の乾と、昨年8月のアジア大会(インドネシア)から乾のパートナーに抜擢された23歳の吉田は、そろって長身で足の形も似ている。乾は「私達はアジア大会の時に中国に負けているので、そのペアに勝てたということと、前回の大会(フレンチオープン、FR91.5333)より点数も伸びたので、やろうとしている方向性について少しは成果が現れた」と手応えを語った。

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二人での話し合いを促した井村コーチ