16年連続で「NHK紅白歌合戦」に出場するなど類まれなる実績を持つ水森だが、良い意味で“女王”の異名とは程遠い、いつも謙虚で偉ぶらない親しみやすい性格は音楽業界やマスコミ関係者、ファンの間では広く知られている。

 多くの報道陣が集まる新曲のリリース関連のイベントの場でも、顔見知りの記者やテレビスタッフはもちろんのこと、若いADに対しても自ら歩み寄り笑顔で挨拶するとともに「わざわざ来てくださってありがとうございます」と感謝の言葉を添える。

 屋外での囲み会見中、たまたま現場に居合わせた観衆から突然声を掛けられても、ニッコリと微笑み、大きく手を振って応えるなど、その人柄の良さを感じさせる瞬間にこれまで幾度となく遭遇してきた。

 その一方で、4月23日に行われた同曲の発売イベントでも自ら独身であることに言及し、「『平成』のうちにみなさんに“良い報告”をさせて頂ければと思っていたんですけど…。『令和』のうちには頑張ります!」と意気込みを語り報道陣の笑いを誘うなど茶目っ気も持ち合わせており、取材現場はいつも温かい空気に包まれる。

 そんな水森もデビュー前の下積み時代には、所属事務所のスタッフの一員として電話番やお茶くみに励んだ時期もあったと聞く。

 演歌歌手の多くはこうした厳しい下積み時代を経て後に大輪の花を咲かせるわけで、彼女の苦労だけが特別と言うつもりはない。

 だが、ヒット曲に恵まれて成功した歌手の中には自分の存在をより大きく見せようとしたり、周囲にかしずかれるうちにいつしか己を見失い虚勢を張ったり、尊大な態度を示す者も少なからずいる。

 どんなに売れても変わらない彼女の人柄には、会うたびに取材する側、される側という立場を超えて一人の人間としていつも感心させられる。

 もっとも、当然のことながら人柄や性格の良さだけでは生き残れないのが芸能界である。

 これまで100曲以上を歌い上げてきた“ご当地ソングの女王”に、今さらながらご当地ソングを歌ううえでの心構えを聞いてみると、こう明かす。

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自分が主人公にならないように