藝大生がつくる野外オペラ “本当はコワい“「ヘンゼルとグレーテル」

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舞台稽古の様子。『ヘンゼルとグレーテル』は5月6日(月祝)16時開演。入場料は一般 4500円、学生2500円、高校生以下500円、未就学児は無料(ただし保護者の膝の上での観劇の場合に限り)
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舞台稽古の様子。『ヘンゼルとグレーテ...

 東京藝術大学の学生や卒業生たちが中心となって企画した野外オペラプロジェクトが、まもなくお披露目となる。演目は「ヘンゼルとグレーテル」。フルオーケストラで上演されるこの日本語オペラには、現代社会へのメッセージもこめられているという。

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 ゴールデンウィークの最終日(5月6日)、上野公園不忍池のほとりにある水上音楽堂で、野外オペラが上演される。演目は「ヘンゼルとグレーテル」。有名なグリム童話をもとにした、子どもから大人まで楽しめるオリジナル作品だ。

 このオペラを手がけるのは、東京藝術大学の現役生と卒業生の有志。「芸術をもっと楽しく、身近なものに」という思いから上演プロジェクトが始動した。とはいえ、なぜ敷居が高いイメージもある「オペラ」なのか。

 自身も藝大出身で、実行委員会の代表を務める松永小百合さんは次のように話す。

「私たちは、2015年から上野公園で、藝大の学部生や卒業生が中心となって取り組むアートイベント『コモゴモ展』を定期的に開催してきました。アートマーケットやライブペイント、野外コンサートなどを通して、芸術の魅力や楽しさを発信する活動を続けています。今回の『ヘンゼルとグレーテル』は、コモゴモ展が取り組む初めてのオペラです。藝大には音楽学部と美術学部という2つの学部があるのですが、音楽と美術の総合舞台芸術であるオペラなら、両学部の出身者が一体となってひとつのプロジェクトを形にできると考えました」

 松永さんは、根津にあるバー「天井桟敷の人々」をパートナーと継ぎ、4代目として店を切り盛りしている。バーには夜な夜な藝大の学生が集まり、ときには演奏会が開かれることもあるという。そんな松永さんたちが挑戦するのは、肩肘を張らず、リラックスして楽しめる日本語オペラだ。

 とはいえ、学生の発表会レベルの演し物ではなく、本格派のオペラを目指す。今回上演される「ヘンゼルとグレーテル」は、グレーテル役の日野祐希さんと指揮の平塚太一さんの企画がベースになっているが、歌い手は日野さんをはじめ、藝大声楽科の歴代首席が顔をそろえる。訳詞も担当した平塚さんが代表を務める「やたたフィルハーモニー管弦楽団」が70人編成のフルオーケストラでオペラを支える。合唱には、上野公園のある台東区内の小学生たちも参加している。

 ストーリーのほうはおなじみのグリム童話だ。仲のよい兄妹が深い森で迷子になり、お菓子の家で魔女に捕えられる物語だが、原作に少しアレンジも施しているという。演出を手がける田丸一宏さんは次のように語る。

「ヘンゼルとグレーテルは『ゴミ屋敷』に住んでいる、というところから物話が始まります。いま、児童虐待や子どもの貧困などが大きな社会問題となっていますが、子どもが厄介払いされ、“ゴミ”として捨てられる、という設定なんです」

 現代に通じるメッセージがこめられているようだが、実は原作においても、貧困は物語のテーマでもある。長い飢饉で、貧しいきこりの一家は食べるものがなく、お腹をすかせている。このままでは一家は共倒れ。そうなる前に、両親は子どもたちを森の奥に置き去りにしようと考える……。グリム童話は“本当はコワい“のである。

 ちなみに、松永さんのバーの店名の由来ともなっている映画『天井桟敷の人々』では、天井桟敷に詰めかけた客たちがパントマイム芝居に熱狂するシーンが有名だ。演劇や音楽は退屈な日常のうさを晴らしてくれるもの。この「ヘンゼルとグレーテル」もゴールデンウィークに観るのにふさわしい、そんなオペラに仕上がっているのではないだろうか。(山田智子)

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