上野氏と同じようなことを新入生に訴えた学長がいた。国際基督教大の入学式の式辞で、日比谷潤子学長はこう説いている。

「今の日本では、ほぼ2人に1人は4年制の大学に行くわけです。このような時代に学生生活を送ることになる皆さんの中には、大学、とりわけ学部に進むのは、ある程度当然と思っている人もいるかもしれません。しかし現実には、経済的な困難等、本人の能力とは関係のないさまざまな事情で進学を諦めざるを得ない人も少なくありませんし、広く世界に目を向ければ、高等教育はおろか、初等・中等教育段階で学校に行けなくなってしまう人々も、残念ながら、少なくありません。幸運にもこれまで教育を受け、今日大学院に入学した人を含め、さらに進学する機会を与えられた皆さんには、一体何が求められているのでしょうか。(略)

 神と人とに奉仕するため、言い換えれば、『受けるよりは、与える方がさいわいである』ことを忘れず、自分に課せられた務めを忠実に果たすことによって他者や世界に貢献するためです」(4月2日)

 上野氏は東京大祝辞で、女性がまだまだ差別されている現状を訴えていたが、これに関連して、恵泉女学園大の大日向雅美学長も入学式で警鐘を鳴らしていた(2018年)。政府による男女平等社会へ向けての政策に疑問を呈し、女性の活躍を追い求めている。 

「私は人が社会の中で生きていくうえで、女性・男性という性別を厳密にすることには基本的に賛成ではありません。女性・男性を超えた人としてのあり方が尊重されるべきだと考えております。それでいて、なぜ、あえて『真の女性活躍』という言葉を使うのか、そこには二つの理由があります。

 まず一つは、今、国をあげて言われている女性活躍にやや疑問があるからです。官庁や大手企業、あるいは政治の中枢等の社会の表舞台に立って活躍する女性に光が当てられています。女性が決定権をもつポジションにつく意義が大きいことは確かですが、しかし、女性活躍として真に目指されるべきものは、ただ華やかな表舞台で決定権をもつ活躍だけとは限りません。

 人生は地道なことの積み重ねです。大切な家族のため、地域のために、人を支え、また支えられて生きることの意義も忘れてはなりません。そうした経験の積み重ねが表舞台に立つチャンスをつかんだ時、周囲の方に細やかな思いやりを注ぎ、ご自身はもとより、周囲の方にも力を発揮してもらえる真のリーダーとなれると考えているからです」

次のページ