■ネバネバの正体は?

 納豆の特徴はあのにおいとネバネバだ。ネバネバはPoly-y-glutamic Acid(y-PGA)というグルタミン酸のポリマー(重合体)だ。ポリマーのポリ(poly)とは「たくさん」という意味だ。グルタミン酸がたくさん集まって鎖とか網のような状態になっているのだ。

 われわれ人間のような動物だけでなく、植物も感染症にかかる。ブドウのところでそういう話をした。実は、菌も病気になる。菌にウイルスが感染するのだ。細菌に感染するウイルスをバクテリオファージという。

 納豆菌にある種のバクテリオファージが感染すると、y-PGA分解酵素を用いてy-PGAが作れなくなり、「粘らない欠陥納豆」ができてしまうのだそうだ。感染症は人間にとっても脅威だが、植物や(感染症の原因とされがちな)微生物にとっても脅威になることがあるのだ。

 納豆は健康によさげな印象を持つ食べ物だ。ネバネバしているものは健康によい、とか精力がつくといったオヤジ目線な「神話」も耳にする。

 しかし、そのような健康効果を示した研究をぼくは見つけることはできなかった。どうもいわれているほど納豆が健康によいという実証はなされていないようだ。納豆を食べると骨が強くなるかも、という研究はひとつ見つけたが、「骨が強くなる」と「骨折しなくなる」は同義ではない。こういう「意味のあるアウトカム」があるかどうかは不明なままだ(Katsuyama H.et.al. Journal of Nutritional Science and Vitaminology. 2004;50(2):114-120)。

 ところで、納豆にはビタミンKが多く含まれており、いろいろな医薬品の血中濃度に影響を与える。とくに不整脈の治療などに使われる抗凝固薬のワルファリンなどは納豆を食べていると、ワルファリンの血中濃度がどんどん下がってしまう。要注意だ。

■酢
 酢は漬物を作るときに用いていた。そして、その酢そのものの製造過程でも発酵は活用される。酢も発酵食品、酢を用いた漬物も発酵食品というわけだ。酢は、糖からアルコールを作る酒造りの、さらに先にある存在だ。いったい、どういうことか。つまり、糖からアルコールができ、そのアルコールが酸化されると酢になるというわけだ。

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お酢は健康にいいというデータはある?