「結弦と日本で競技ができたということも、非常に嬉しい。当然彼が演技をすれば客席は総立ちになり、電気が走るようなしびれる雰囲気になるだろうと思っていました。幸い今日はくまのプーさんもリンクの片側に寄っていたので、私もウォーミングアップがしやすかったです。日本のお客さんが私達選手をどれだけ思っているか、またスケートをどれだけ愛しているかは、実は氷を埋め尽くしているクマのプーさんが表していると思います。彼らの情熱が象徴されていて、自分自身もそれを見ると感動しています。結弦に対する大きな歓声のあと、私も氷上に立って、同じような(あるいは少し歓声は少なかったでしょうか?)応援をしてもらったと思います。だからこそ本当に、この競技が大好きです」

 エール大学に通う文武両道の世界王者らしい、気品のあるコメントだった。日本のファンの情熱が海外スケーターに好意を持って受け止められることで、会場の雰囲気はさらによくなっていく。世界選手権が行われたさいたまスーパーアリーナは、競技場として理想の空間だったのかもしれない。(文・沢田聡子)

●プロフィール
沢田聡子
1972年埼玉県生まれ。早稲田大学第一文学部卒業後、出版社に勤めながら、97年にライターとして活動を始める。2004年からフリー。シンクロナイズドスイミング、アイスホッケー、フィギュアスケート、ヨガ等を取材して雑誌やウェブに寄稿している。「SATOKO’s arena」