フォームをスリークウォーターにするとリリースが安定し、ストレートの球速もアップした。特にとくに切れ込むカットは投球を組み立てる上で大きな武器となり、プロへの扉を開くことになった。

 晴れてドラフト1位でDeNAに指名され、ローテーションに食い込んだ上茶谷だが、現在はプロの壁に直面しつつある。

 デビュー3戦目となった16日の中日戦では持ち味のコントロールを乱し、5失点を喫し4回で降板。学生時代より狭いプロのストライクゾーンには慣れてきたとはいうが、苦しいカウントになると微細な制球が効かなくなり、さらに球威も落ちてしまう悪循環に陥った。上茶谷は「修正することができなかった」と反省の弁を述べている。

 キャンプ中から上茶谷は「修正力」について課題があると語っていたが、立ち上がりが悪くても、さらにランナーを背負う厳しい場面であっても、動じることなく本来のピッチングを取り戻す工夫が今後は必要になってくるだろう。元来、インコースに投げるのは得意だと公言しているだけに、慣れとコツさえ掴めば、二桁勝利も見える実力はあるはずだ。

 上茶谷に、ピッチャーをやっていて面白いところ、そしてファンに見て欲しいところはどこかと聞いたとき、すぐさま「見逃し三振ですね」と口にした。

「三振って見ていて気持ちいいですし、とくに僕は見逃し三振が好きなんです。取りたいときには見逃し三振を狙っていきたい」

 当然、微細なコントロールと多彩なコンビネーションが必要となるわけだが、見逃し三振だけをクローズアップすれば、まだまだプロの世界で上茶谷が思う本来の姿は披露できていないということだろう。

 憧れの選手はダルビッシュ有だという。

「けど、僕のタイプを考えると金子弌大(千尋)さんが理想ですね」

 コントロールとボールの切れと組み立てこそが真骨頂。また学生時代から「負けてはいけない試合になるほど気持ちが強くなるんです」とも力強く語る。

 いよいよ横浜スタジアムでの公式戦デビュー戦。本拠地での第一歩を踏み出す負けられないマウンドで上茶谷がどんなピッチングをするのか刮目したい。(文・石塚隆)