鈴木さんによれば、客観的な状況や評価がまった同じでも、文化部の女子は運動部や「所属なし」の女子に比べて「恋人ができる確率は約3分の1程度にまで下がる」そうです(※学力が比較的低い学校に限る)。

 3分の1というのはショッキングな数字です。

 でも、聞いてください。今回の調査では、もっと大事なことがわかっていました。それは恋人がいるからと言って「学校生活に満足しているとはかぎらない」という調査結果でした。自己肯定感が上がったという結果も出ていません。

 恋人ができれば学校は楽しくてしょうがない。自分に自信も生まれる。そういう結果が出たのは、恋人ができづらい傾向(モテない)の男子に恋人ができた場合でした。

 一方、本調査でもっとも考えさせられたのは「女子の世界」です。女子の場合、恋人ができると、いじめを受けるリスクが高まっていました。鈴木さんはこう話します。

「調査結果によれば、学校を一番楽しめて、いじめのリスクが少ない女子中学生は、運動部に入りつつ、一見、モテそうに見えるけど『彼氏がほしいよね』とか『イケメンがいないよね』と仲間内で言っているだけの子たちです。しかし実際、彼氏ができると、クラス内でバカにされるなど、その子に刃が向けられる傾向が見受けられました」

 日本社会には「純粋な愛情のみに基づく恋愛こそすばらしい」という風潮があります。こうした恋愛神話に染まりやすい状況にもかかわらず、女子生徒は恋人ができたらいじめのリスクが高まる……。こんなの、もはやトラップです。こうした複雑な現象が起こるのは、特殊で人間関係の圧力にさらされている学校内だからこそなのでしょう。鈴木さんはこの現象を「ラブ・イデオロギー・トラップ」と名付けました。

 調査からわかった結果をまとめます。恋人ができやすい部活動は、男子なら吹奏楽部などの音楽系。女子ならバスケ部などの球技系です。

 しかし恋人の有無と学校生活の満足度は無関係です(恋人ができにくい傾向の男子以外)。女子に限っていえば、恋人の有無で、いじめへのリスク傾向があがっていました。

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「彼氏(彼女)」に“魔法”は無いという現実