2003年にマーリンズでメジャーデビューを果たし、タイガース移籍後の2012年にメジャーでは45年ぶりの三冠王となったミゲル・カブレラ一塁手は、2014年の開幕前にタイガースと総額2億4800万ドルの8年契約を結んだ。この時点で残っていた契約を含めると、実質的には2億9200万ドルの10年契約だ。

 カブレラは2013年まで三冠王も含めて3年連続で首位打者、2年連続でリーグMVP、マーリンズ時代から続けて10年連続で100打点以上と安定感のある打撃を誇るスラッガーだった。大型契約後も2015年にはキャリア4回目の首位打者に輝くなど3年連続で打率3割をキープしていた。

 だがカブレラも契約延長した2014年で31歳。34歳となった2017年には打率2割4分9厘、16本塁打、60打点と成績が急降下する。2018年も左の上腕二頭筋の腱断裂という重傷で38試合の出場に終わるなど、契約の折り返し時点で早くも暗雲が漂ってきた。

 話をハーパーに戻すと、彼にはプホルスやカブレラと同様にスラッガーとしてたぐいまれな才能があるのは疑う余地がない。それは2015年に42ホーマーを放ってキャリア初のタイトルとリーグMVPに輝いたことが証明している。

 だが故障の多さは不安材料だ。昨季までのナショナルズの7年間で140試合以上出場できたのはわずか3シーズンのみ。守備時にフェンスに激突してひざを痛めたり、走塁でのスライディングで左手親指の靭帯を断裂するなど、数年おきに長期離脱を経験している。こうしたケガの多さは長期契約においては無視できないリスクと言えるだろう。

 またハーパーは、米国のトップアスリートがしばしば求められる「ロールモデル」、いわゆる「お手本となるような模範的な人物像」からは遠い。幼いころから天才少年として知られ、そのビッグマウスぶりは有名。ホームランを浴びせた投手への挑発行為も珍しくなかった。メジャーリーガーとなってからも死球をぶつけてきた投手に激高して乱闘の引き金を引き、退場処分を食らったこともある。

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グラウンド外で“恩恵”をもたらすハーパー