2019年4月7日、初の「アジア太平洋地域中医薬サミット」が東京で開催された(写真提供・イスクラ産業)
2019年4月7日、初の「アジア太平洋地域中医薬サミット」が東京で開催された(写真提供・イスクラ産業)
「アジア太平洋地域中医薬サミット」のシンポジウムで語る東京有明医療大学の川嶋朗教授(左)と富山大学大学院理工学研究部の横澤隆子特別研究員(写真提供・イスクラ産業)
「アジア太平洋地域中医薬サミット」のシンポジウムで語る東京有明医療大学の川嶋朗教授(左)と富山大学大学院理工学研究部の横澤隆子特別研究員(写真提供・イスクラ産業)

 頭痛、めまい、肩こり、冷え、むくみ、倦怠感……。体の不調を感じ、近所のクリニックを受診したものの、血液検査をされ、「異常はありませんね」などと言われて、腑に落ちない……。そんな経験をしたことはないだろうか。このように、症状があるのに診断のつかない“未病”といわれるような状態に対して、頼りになるのが「中医学」や「漢方」だ。中医学とは2000年以上前に生まれた中国の伝統医療で、日本の漢方のルーツだ。

 その中医学の専門家が集う、初の「アジア太平洋地域中医薬サミット」が4月7日、東京で開催された。世界15の国と地域から約700人が一堂に会したサミットを取材した。西洋医学と中医学を併用した最新の研究結果などが発表され、新たな動きが始まっている。

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 現在、日本の漢方は、西洋医学を補完する医療としてポピュラーだが、本家の中医学とは異なる点も多い。簡単に言うと、漢方はセミオーダーメイド、中医学はオーダーメイドといわれる。中医薬を用いる中医学のほうが、診断方法や処方が複雑でより個々に対応しているためだ。

 さらに、医学としての大きな違いは、日本では漢方医療は、西洋医学の医師免許を持っていないとできないが、中医学は西洋医学とは別の免許を取得しておこなえる。

 このように違いのある中医学と漢方だが、いずれも、患者個々の症状の訴えや生活習慣にフォーカスして、「見る」「触れる」診察を重視する医療だ。

「アジア太平洋地域中医薬サミット」は、アジア太平洋地域における中医薬のさらなる交流と発展を促進し、中医薬を用いて人々の健康増進に貢献することを目的として、中国・北京に本部を置く世界中医薬学会連合会と日本全国約1000店舗の薬局・薬店からなる日本中医薬研究会(会長・乾康彦)が合同で主催。まさに西洋医学では手の届かない“かゆいところ”にフォーカスできる医療であることをアピールした。

 サミットで興味深かったのが、「補腎活血(ほじんかっけつ)」と「活血化お(かっけつかお)」というキーワードだ。

「新時代における中医薬の役割」と題した基調講演では、天津市中医薬研究院の張大寧教授が、現代医学のなかで中医薬が果たすべき使命について、有効性や治療の簡便さ、経済性など中医薬の特徴と利点について述べた。

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新時代の中医薬の役割とは?