広島カープの鈴木誠也(c)朝日新聞社
広島カープの鈴木誠也(c)朝日新聞社

 それは衝撃的な光景だった。

 4月10日のマツダスタジアム、3対3で延長戦に突入した広島対ヤクルト戦。10回表のヤクルトのスコアボードに『12』の数字が表示されたのだ。最終的にこの日も3対15で広島は敗戦。これで開幕から4カード連続で負け越しとなった。翌日は先発の岡田明丈が立ち上がりからストライクが入らず、2回途中で6四球を与えて6失点でノックアウト。12日のDeNA戦では今永昇太の前にわずか1安打に終わり完封負けを喫し、ドロ沼の5連敗。4連覇を目指すチームに早くも暗雲が垂れ込めている。そこで今回はそんな広島の不安要素を改めて洗い出し、復調のポイントはどこにあるのかを探ってみたいと思う。

 開幕前、最もポイントだと言われていたのがFA巨人に移籍した丸佳浩の穴をどう埋めるかということだった。2年連続でリーグMVPに輝き、昨年も39本塁打、97打点をマークした打力だけでなく、センターとして6年連続ゴールデングラブ賞を受賞している守備力を考えてもその穴は簡単に埋まるものではない。

 しかしここまでは「3番・センター」だけが機能していないわけではない。開幕から主に野間峻祥がその役割を担っているが、ここまでホームランこそ1本と少ないものの、打率は3割を大きく超えており、守備面でも度々好プレーを見せている。

 それよりも攻撃面で機能していないのは1番の田中広輔、そして鈴木誠也の後ろを打つ5番打者である。田中は4月3日の中日戦から9日のヤクルト戦まで6試合連続ノーヒットと苦しみ、四死球もここまで7つ。持ち味である盗塁も出塁数の低下に伴って当然増えず、わずか1つに終わっている。4年連続で100三振以上ともともと三振が多い選手であるが、開幕から14試合で17三振と例年以上に多いのも気になる点だ。速いストレートに差し込まれて左方向へのフライアウトが目立ち、スイングのキレを欠いているのがここまでの不振の原因に見える。

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西尾典文

西尾典文

西尾典文/1979年生まれ。愛知県出身。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究し、在学中から専門誌に寄稿を開始。修了後も主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間400試合以上を現場で取材し、AERA dot.、デイリー新潮、FRIDAYデジタル、スポーツナビ、BASEBALL KING、THE DIGEST、REAL SPORTSなどに記事を寄稿中。2017年からはスカイAのドラフト中継でも解説を務めている。ドラフト情報を発信する「プロアマ野球研究所(PABBlab)」でも毎日記事を配信中。

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低調のなかでも見えた光明は?