弘兼:体技心ですね。体をつくってから技を磨いて、最後は心がついてくる。石毛さんは若い選手を教える立場にある。トップアスリートだとしても、もっと上のやつが出てくる、大谷翔平選手のような。ああいう人にどう教えていいか、悩みませんか。僕は25年間、小学館漫画賞の審査をやっていた。プロの漫画を審査するんですが、自分より面白いマンガを描くやつがくる(笑い)。でも、落とさなきゃいけないので、心が痛んで。最後に「高評してください」と言われても……と思うんです。

■日本の野球選手は人として心ができている

石毛:大谷翔平は素晴らしい選手です。でも10割は打っていないから、10割打つようにしようと。教えるというよりは、コメントを伝えて気づかせ、キャパを広げてくれればいい。彼がアメリカで人気なのは二刀流で、ベーブ・ルースというヒストリーが引き合いに出たこと。それと彼の身の振り方でしょうね、性格もいいですし。アメリカで人気者になる日本の野球選手は皆、人として心ができている人です。

弘兼:漫画家で心ができている人は……いないかな(笑い)。でも意外とそれって当たっていて、巨匠として残っている藤子不二雄先生とかさいとう・たかを先生とかちばてつや先生とか、みんないい人。性格に問題がある漫画家は実力があっても早いうちに消えています。定年後のことは何か考えてますか?

※週刊朝日ムック『定年後からのお金と住まい2019』から抜粋