久しぶりのデートに緊張(※写真はイメージ)
久しぶりのデートに緊張(※写真はイメージ)

「私たち、結婚しました!」――続けて届いた2通の結婚報告はがき。お葬式に参列することのほうが増えていたというのに、まさか同年代である50代の友人から結婚話を聞かされるとは。もしかして、と調べたところ、ここ20数年で50歳前後の結婚増加が判明。総数から見れば少ないものの、“50歳からの結婚”が増えていることは間違いないようだ。連載「50歳から結婚してみませんか?」では、結婚という大きな決断を50歳で下すことになった女性の本音とリアルに迫る。第25回は、14歳年下の男性と結ばれた品川エミさん(仮名・62歳・デザイナー)の前編をお届けする。

*  *  *

 もうすぐ63歳というが、人懐こい笑顔のせいか、10歳はゆうに若く見えるエミさん。グラフィックデザイナーという職業柄、個性的な雰囲気も醸している。

「今、絵画の勉強をしていて、色に夢中です。次はこの色使ってみよう、これもいいなって」

 天性の明るさに加え、無邪気に話す様子は、エミさんが今幸せの真ん中にいることを物語っているようだ。

「私の結婚の話でしたよね(笑)。震災の年でしたから、2011年で、8年前です。世の中は震災の影響で大変な時期でしたが、私はかなり浮かれていました。不謹慎ですが、人生でいちばん幸せなときでした」

 2011年の9月に結婚。エミさん54歳、彼は40歳。なんと14歳年下婚だった。

■絵描きになりたいと会社を辞めてヨーロッパへ

「話せば長くなるんですけどね」と前置きをして、エミさんは夫との馴れ初めを話してくれた。

「フランスの商品を扱う会社で、パッケージデザインや社内報を作っていたんですが、フランスにかぶれて、絵描きになりたいと会社を辞め、ヨーロッパを旅したんです。それで、ルーブル美術館でナポレオンの戴冠式の絵を見て、壁のような大きさとその迫力に圧倒され、『私は絵を描く人間じゃない!』と思い知らされました」

 未来の夢はガラガラと音を立てて崩れ、絵はどうでもよくなってしまい、失意の中帰国後、1週間ほど熱を出して寝込んでしまった。とはいえ、何か仕事をしないと食べてはいけない。

次のページ
事務の仕事についたエミさんだったが…