欠点は、読んでいる側である親があくびをしたり、ゆっくり読んだりすることで、一緒に眠くなってしまう点でしょうか。フランスの哲学者アランは『幸福論』で、「幸福だから笑うのではない、笑うから幸福なのだ」、つまり人間は自分がした行動により、脳が「そういう気分である」と感じることができる、と言っています。

 本当にそのとおりで、「なんだか眠くなってきた」「ふわあぁ~」という言葉を声に出していると、「自分は今、眠くなっている」と脳に働きかけてしまうのです。おかげで、子どもが寝ていないのに自分が先に寝落ちてしまうこともありました。

 そして肝心の、子どもを眠らせる効果はというと……私の息子が眠る確率は、五分五分といったところ(私にはかなり効きましたが)。周囲の友人たちにも試してもらい分析すると、結論としてはもう「子どもの性格による」としか言えません。

 催眠術にも、かかりやすい人間とかかりにくい人間がいるわけで、この本の効果も同じことがいえそうです。私の息子は、かっこいいストーリーを重視する性格だったため、ただロジャーと歩いていくだけのこの本を受け入れるかどうかは、そのときの気分による、といった感じでした。

 絵本を読んでいると、たまに、「そんな話よりも、丸井に桃太郎とライダーが来る話がいい」などと、聞いたこともない完全な創作をむちゃブリしてくるような子なのです。ワクワクする話が好きな子には向かないかもしれません。あとは、登場人物たちが眠くなるためのコツだと言って、「力を抜く」「ゆっくりする」とアドバイスしてくれたり、自分がいつのまにか「くたくたに疲れて眠くなっている」と感じさせるような文章があったりするので、赤ちゃんよりも、ちゃんと言っている意味がわかる年齢の子のほうが、眠りやすいと思います。

 とにかく普通の絵本とは異なる点が多く、軽い気持ちでページを開くと、字がびっしり並んでいます。「これを全部読まなくてはいけないのか? 」とためらってしまうほどの文字数です。

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高度な子守歌? 絵本らしくない1冊