漢方薬とは、一般的に所定の生薬を決まった量や配合で構成したもののことで、「処方」や「方剤(ほうざい)」と呼ばれています。

 日本で使われている処方の多くは、『傷寒論』や『金匱要略(きんきようりゃく)』を原典としていますが、日本で独自に考案された処方もあります。現在の日本漢方の場合、多くはエキス剤が用いられます。保険が適用されている医療用漢方製剤は148処方あり、その中から患者の体質に合う処方や症状に効く処方を選択します。

 一方、中国漢方では患者の体質に合わせて基本となる処方の配合を変えるなどして、一人ひとりに合わせてアレンジします。このためエキス剤ではなく、その都度調整が可能な煎じ薬での治療が中心です。

 こうした違いから、日本漢方は「セミオーダー医療」、中国漢方は「オーダーメイド医療」といった言い方をされることがあります。また、中国漢方のほうが日本漢方よりも生薬の配合量が多めで、処方できる生薬の数が多いという違いもあります。(文・中寺暁子)

■北里大学客員教授 小曽戸洋先生
東京薬科大学卒。日本大学で医学博士、文学博士を取得。日本医史学会前理事長。上海中医薬大学客座教授。

※週刊朝日ムック「家族ではじめる本格漢方2019」から