週刊朝日ムック「家族ではじめる本格漢方2019」から
週刊朝日ムック「家族ではじめる本格漢方2019」から

 2千年以上前に中国で成立した漢方。その後日本に伝来し、長い歴史の中で独自に発展し、現在にいたっています。漢方と呼ばれるようになったのは、江戸時代のこと。オランダの医学が伝来したことで、区別するためにオランダ医学を「蘭方」、それまでの医学を「漢方」と呼ぶようになりました。このため漢方という呼び方は、日本独自のものなのです。

 一方、中医学は中国の伝統医学のこと。中国で発展し、現在も中国で行われている中医学と日本で取り入れられている漢方では、呼び方だけでなく、考え方や診察、治療において異なる面があります。このためここでは、便宜的に日本式の漢方を「日本漢方」、中医学を「中国漢方」と記して、その違いを紹介します。北里大学東洋医学総合研究所医史学研究部の小曽戸洋客員教授に解説してもらいました。

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 日本では医師になるには、西洋医学の医師免許を取得することが必要です。たとえ漢方専門医として診療している医師でも、大学の医学部で西洋医学を習得しています。このため、西洋医学では治せない病気を漢方で治療するというように、西洋医学と漢方医学が補い合うような形の医療が特徴です。

 一方、中国では西洋医学と漢方の医師免許は別です。中医師(漢方専門の医師)になるには、「中医薬大学」「国医大学」など漢方専門の大学で学び、医師免許を取得します。このため、漢方の研究が進み、新しい処方や理論の構築などにも力を入れています。医療機関も西洋医学と漢方医学で別になっていることが多いですが、近年は「中西医結合医療」といって、日本のように西洋医学的な検査や治療と漢方を組み合わせる医療が取り入れられていることもあります。

 さらに、実際の治療の現場でも、日本漢方と中国漢方では異なる点があります。その違いを「診察」「診断」「処方」に分けて見ていきましょう。

 漢方では「四診(ししん)」という特有の方法を用いて診察します。望診(ぼうしん)、聞診(ぶんしん)、問診(もんしん)、切診(せっしん)の四つの方法がありますが、中国漢方と日本漢方ではその方法に違いがあります。

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日本とっ中国で違う診察方法