山:僕、字のタッチが基本的にダイイングメッセージって言われるんですけど、筆圧が強いんですよね。(ノートを読んで)「眠くなったらあのスタジャンの顔を思い出せ!!」……これは某テレビ番組にいた、スタジャンを着たすっごいムカつくスタッフのこと。M-1で優勝した後、別のスタッフさんに「スタジャンさんが担当つくんだったら、僕らは出ません」って、言ってやりました。M-1でポッと出の人間が言うセリフじゃないんですけど、これは絶対言ってやろうと思っていて。「え、何かされたの?」と聞かれたから、「実は……」と全部話してやった。そしたら、ホントにそいつは終わりましたね。

大:山里さんそれはつぶ……。

山:大坂さん、それは言い方がよくない。「つぶした」んじゃなくて、「成仏」させた。または「成敗」。世直しだからね、うん。

大:ホントに昨日嫌がらせされたように話されますよね。

山:自分でも不思議なんだけど、さっきその事件があったんじゃないかっていう温度で怒れるんですよ。今もずっと全部。この熱を何かに使わないとただ自分が焦げていくだけだから、なんとかこれをエネルギーに変えなきゃいけないって思っていることに、この本を書きながら気づきましたね。怒りとか嫉妬とかを燃料に自分は動けていたんだ、ということはアイツらも役に立っていたんだ、と。書きながら、それをどんどん再確認しましたね。だから、書いちゃって全然後悔はしていません。

■書店回りが心のリハビリ

大:今回の本で、山里さんはすごく書店回りをしてくださっています。何かきっかけはあったんですか?

山:きっかけはたぶん、書店さんに優しくされたからですね。最初は本が棚ざしでそんなに目立ってないのに、行ってサイン書かせてもらうと、すごくいいところに平積みで置いてくれたりする。あ、こんなにわかりやすいんだ。やっぱりこれは人と人だなと。それに味を占めて、めちゃくちゃ行きまくりましたね。

大:こちらで把握している数だけで4880冊。山里さんが飛び込みで書かれているのも加えれば、ゆうに5000冊以上は書かれていますね。

山:そうなるとサイン本の価値って何なんでしょう。インフレ起こしちゃってる(笑)。でも本当は、作者が来てサイン書かせてくださいと言われるのは、書店さんにとってキツいんですってね。字を書くと返品できなくなっちゃうから。それで後半は、僕も書店に行くのをちょっと抑えたんです。確かにサインによるテロだから。カツアゲだから。まがりなりにもテレビに出ているような人間が来たら、断りづらいですよね。

大:とはいえ、断られたこともある?

山:書店さんに行って「もしご迷惑じゃなければ、サインを書かせてもらえませんか」とお願いすると、「待ってくださいね」ってバーッて検索して「在庫ないんですけど。取り寄せになります」って言われたことがあります。「注文じゃないんですけど!」って(笑)。「サインとかあると返品ができなくなるもんで」と、正直に言われたことも。でも書店巡りをして、シンプルに「人間っていいな」って思いましたね。もうバケモノのコメントだけど。「人間ってみんなやさしいな~」って。

大:そんな忘れられないエピソードが?

山:高知に最近行ったんですけど、店のドアを開けたら、入り口に「山ちゃんお帰り」って書いてありました。僕、生まれ千葉ですよ? しかも店長さんが、「日本で一番この本を売る書店になります」って言ってくれて。そんなことを言ってくれる書店さんが何軒もある。ありがたいです。書店巡りしたら優しくなれます。ちょっとした心のリハビリでした。

(構成/松田明子)