いわば、常連を満足させながらも、新しい客を取り込むことにも一切手を抜いていない。徹底して観客目線に立っていなければそういうことはできない。そこに何よりも感心した。

 彼らはどうしてもキワモノに見られがちだが、楽曲のクオリティは高い。『令和』に関しても、新元号を何度も繰り返すサビの部分はキャッチーで覚えやすいし、全体として次の時代に希望を感じさせるような歌詞になっているところもいい。

 新元号が発表されて、マスコミではそれ自体が好きだとか嫌いだとか、いいとか悪いとか、ひたすらどうでもいいことばかりが語られている。

 そんな中で、ゴールデンボンバーが新曲『令和』で示したのは「この時代の節目をみんなと一緒に楽しみたい」という前向きな気持ちである。それは、彼らが楽曲制作の過程を生配信したことにも表れている。彼らはただ、多くの人と一緒に、この世紀の瞬間を共有して楽しみたかっただけなのだ。何よりもその心意気を買いたい。

 最高のエンターテイナーとは、自分が楽しむことで人を楽しませる人のことだ。ゴールデンボンバーはそれが実践できている。楽器を演奏する人たちのことをバンドと定義するのなら、彼らは偽物のバンドなのかもしれない。だが、彼らのエンターテイナーとしての意識の高さは、紛れもない本物である。(ラリー遠田)

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ラリー遠田

ラリー遠田

ラリー遠田(らりー・とおだ)/作家・お笑い評論家。お笑いやテレビに関する評論、執筆、イベント企画などを手掛ける。『イロモンガール』(白泉社)の漫画原作、『教養としての平成お笑い史』(ディスカヴァー携書)、『とんねるずと「めちゃイケ」の終わり<ポスト平成>のテレビバラエティ論』 (イースト新書)など著書多数。近著は『お笑い世代論 ドリフから霜降り明星まで』(光文社新書)。http://owa-writer.com/

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