日本には梅雨を含め、気候の問題がある。加えて敷地の問題などから、球場、スタジアムの多目的使用は避けられない。その中で内外野天然芝の球場は労力、コストなど多くの負担を伴う。だが、そこにマツダはあえて挑戦している。広島は時を同じくしてチームも強くなりはじめた。いわば球場というハード、チームというソフトの両部分で歯車がうまく回り始めている。

 スポーツ観戦とは「非日常」の世界。そのためには、日頃の喧騒を忘れさせてくれるような環境であることが大きい。色やデザインなど上辺の見た目だけでなく、匂いや空気感、いわゆる五感すべてを刺激してくれる場所に行きたい。

「人工芝は人工芝ですから」とかつて語った選手もいた。なぜならその下にあるのは、普段の生活環境とまったく変わらないアスファルトなのだ。

 マツダだけでなく、楽天生命パーク宮城、甲子園などは、まさにそういう「非日常」を感じられる場所だ。日本ハム新球場も開閉式ドームでの内外野総天然芝。個性のある、行きたくなる野球場がこれからどんどんできて欲しいものだ。 (文・山岡則夫)

●プロフィール
山岡則夫
1972年島根県出身。千葉大学卒業後、アパレル会社勤務などを経て01年にInnings,Co.を設立、雑誌『Ballpark Time!』を発刊。現在はBallparkレーベルとして様々な書籍、雑誌を企画、編集・製作するほか、多くの雑誌、書籍やホームページ等に寄稿している。Ballpark Time!オフィシャルページにて取材日記を不定期に更新中。現在の肩書きはスポーツスペクテイター。