袋詰めのスピード感、購入後の客の行動パターンを先読みした気遣い……レジ業務に求められるのは会計だけでなく、心地よいサービスを提供する瞬時の判断力だ。いやこれ、日本人でも難しいって!

「精算のほか宅配物の受け渡しなど、覚える業務はたくさんあります。複雑かもしれないけど、このこだわりの接客が日本なんだよ、文化なんだよ、って丁寧に何度も説明します。すると、みんな納得してくれる」

 と話す吉岡さん。外国人と同じ職場で働くときは、「なぜそうするのか?」と物事の背景を説明し、理解してもらってから一歩を踏み出すことが大切なんだな、と気づかされた。

 レジに立ったアミラさんは、落ち着いていた。電話料金の収納代行もてきぱきとこなす。女性客がレジに持ってきたパスタサラダを一瞬「温め……」と言いかけたが、にこっと笑ってレジをこなし、セーフ。吉岡さんが口酸っぱく「どんなときも笑顔でいれば大丈夫」と言い聞かせてきた教訓を思い出したようだ。

 常にアミラさんのそばに立ち、サポートしていた吉岡さんは言う。

「国籍が違っても、相手を思いやる心は同じ。出会えた縁を大事に接すれば、必ずわかりあえる。むしろ異国でひとり、懸命に頑張る彼女たちから、私たちが学ぶことは多い」

 日本人の働き手が減っているサービス業にとって、留学生は貴重な戦力だ。「語学力と接客力を身につけて、どこへ行っても通用する人材に育ってほしい」と、吉岡さんは母親の顔。コンビニの仕事って奥深い。(文/吉岡秀子)