「早く仕事を覚えたい」と意欲的なアミラさん(撮影/小原雄輝)
「早く仕事を覚えたい」と意欲的なアミラさん(撮影/小原雄輝)

 5万人を超える外国人店員が活躍しているコンビニ。異文化育ちの彼らは「日本流のおもてなし」をどうやって体得しているのか。「AERA English 2019 Spring & Summer」(朝日新聞出版)で、研修現場を取材した。

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 午前9 時、東京・新宿区のローソン。通勤の客足が落ち着いた店内に、青色の制服を着たシンガポール出身のアミラ・マズナンさん(22)の姿があった。心なしか緊張気味だ。

 日本語学校に通うアミラさんは、「語学力を高めたい」とローソンでのアルバイトを志願した見習い生。外国人向けの1 回約3時間の研修を10 回こなし、あいさつからレジ対応、商品陳列、清掃などコンビニで働く「技」を体得して初めて“店員デビュー”できる。

 ローソンでは、従業員全体の6 %を占める約1万2000人の外国人クルー(従業員)が働いているというが(2018 年11 月末)、舞台裏で接客のいろはを教える手厚い研修があったとは。

「育てているのは、どのお店でも働ける“スペシャリスト”。レベルの高い接客を学んでもらいます」

 そう話すのは、店舗に人材を派遣するローソンスタッフのチーフトレーナー・吉岡由美子さん。留学生500人以上を一人前のクルーに育て上げてきた、“日本のおかあさん”だ。

 7回目の研修を受けにきたアミラさんは、この日初めてレジに立つ。その前に接客マナーの復習だ。

「弁当とドリンクをレジに持ってこられたら何て言う?」(吉岡さん)

「温めますか?」(アミラさん)

「正解。レンジの加熱に時間がかかるから、最初は絶対に“温めますか”だよね。次は?」(吉岡さん)

「袋はお分けしますか?」(アミラさん)

「そう。温かいもの、冷たいもの、勝手に一緒に入れちゃダメ。牛乳のように紙パックのドリンクなら、飲みやすいように長いストローをお付けしようね」(吉岡さん)

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国籍が違っても心は同じ