下川裕治(しもかわ・ゆうじ)1954年生まれ。アジアや沖縄を中心に著書多数。ネット配信の連載は「クリックディープ旅」(毎週)、「たそがれ色のオデッセイ」(毎週)、「東南アジア全鉄道走破の旅」(毎月)、「タビノート」(毎月)
下川裕治(しもかわ・ゆうじ)
1954年生まれ。アジアや沖縄を中心に著書多数。ネット配信の連載は「クリックディープ旅」(毎週)、「たそがれ色のオデッセイ」(毎週)、「東南アジア全鉄道走破の旅」(毎月)、「タビノート」(毎月)

首都のダッカとの間に1日数便の飛行機が就航。多くはプロペラ機
首都のダッカとの間に1日数便の飛行機が就航。多くはプロペラ機

 さまざまな思いを抱く人々が行き交う空港や駅。バックパッカーの神様とも呼ばれる、旅行作家・下川裕治氏が、世界の空港や駅を通して見た国と人と時代。下川版「世界の空港・駅から」。第72回はバングラデシュのコックスバザール空港から。

【コックスバザール空港の写真はこちら】

*  *  *

 コックスバザールの人に訊くと、皆、口をそろえたようにこういう。

「コックスバザール空港は近々、国際空港になる」

 どうも政府がそういう発表をしたようだった。そういう計画がある……というレベルの話ではないかと思っていたが、待合室で飛行機を待っていると、たしかに乗客のなかに欧米人が多い。20~30人はいるだろうか。

 理由はわかっていた。

 難民である。

 いま、バングラデシュ南部のコックスバザール県に、ミャンマーからロヒンギャ人の難民が押し寄せている。すでに100万人を超えているといわれる。人口200万人のコックスバザール県に100万人の難民。これは大変なことなのだ。

 最大規模のクトゥパロン難民キャンプに入った。少なくとも60万人以上の難民が暮らしている。60万人といえば、鳥取県の人口より多い。それだけの人が、約13.9平方キロのキャンプにひしめいている。

 このキャンプの歴史は10年を超えるといわれ、すでにキャンプというより街の様相である。猛烈な人口密度の。

 国連をはじめとする世界の援助団体が入り込んでいる。またその数も膨大である。

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下川裕治(しもかわ・ゆうじ)/1954年生まれ。アジアや沖縄を中心に著書多数。ネット配信の連載は「クリックディープ旅」(隔週)、「たそがれ色のオデッセイ」(毎週)、「東南アジア全鉄道走破の旅」(隔週)、「タビノート」(毎月)など

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