サラリーマンだった父親は帰宅すると必ずといっていいほどビールを飲み、また帰宅時間が遅いときは普段よりも空き缶が多くなっている、なんてこともよくありました。「疲れた時はビールも美味しく感じて、ついつい飲んでしまう」とよく言っていましたが、長時間労働とアルコール摂取の関連性についても報告があります。フィンランド労働衛生研究所のVirtanen氏らが長時間労働とアルコール摂取との関連性について解析した結果によると、一週間あたりの勤務時間が欧州連合(EU)推奨上限の48時間を超える人は健康を害しうる程のアルコール摂取に陥りやすいことが示されました。また、この長時間労働と危険なアルコール摂取の関連は、男女差や年齢に関係なく一貫して認められたということです。

 私は「ALDH2」が欠損しているためにアルコールが全く飲めないので、アルコールを飲み、ほろ酔い気分になるという経験がありません。乾杯のビールも飲んだふり、なんてこともしょっちゅうです。飲酒できる人を羨ましいなあと思うわけですが、10年から11年にかけて16歳以上の成人13,983人を対象に行った英国のウォーリック大学のStranges氏らの報告によると、野菜や果物をよく食べる人ほどより精神的に満たされており、逆に、アルコール摂取や肥満は精神的充足度が低いことと関連していることがわかったと報告しています。

 お酒と健康についての報告をご紹介しましたが、お酒にはコミュニケーションのツールとして欠かせない側面もあります。お酒を飲みながら語り合うことで、互いの距離が近づくこともありますよね。さらには、自然を愛でながらお酒をいただくことで、四季を感じルことができ、人生を豊かにもしれくれます。

 歓迎会が続くこの季節。是非とも参考にしてみてくださいね。

◯山本佳奈(やまもと・かな)
1989年生まれ。滋賀県出身。医師。2015年滋賀医科大学医学部医学科卒業。ときわ会常磐病院(福島県いわき市)・ナビタスクリニック(立川・新宿)内科医、特定非営利活動法人医療ガバナンス研究所研究員、東京大学大学院医学系研究科博士課程在学中、ロート製薬健康推進アドバイザー、CLIMアドバイザー。著書に『貧血大国・日本』(光文社新書)

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山本佳奈

山本佳奈

山本佳奈(やまもと・かな)/1989年生まれ。滋賀県出身。医師。医学博士。2015年滋賀医科大学医学部医学科卒業。2022年東京大学大学院医学系研究科修了。ナビタスクリニック(立川)内科医、よしのぶクリニック(鹿児島)非常勤医師、特定非営利活動法人医療ガバナンス研究所研究員。著書に『貧血大国・日本』(光文社新書)

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