16球で最速は156キロ、最も遅い数字で146キロ、平均では150.2キロとなる。プロ野球でもこれだけのスピードをコンスタントに投げられる選手は数えるほどであり、いかに佐々木のポテンシャルが並外れたものであるかがよく分かる。更に言うとこの日試合が行われた時間帯の矢板市の気温は8度。本格的にブルペン入りしたのはこの試合の3日前ということを考えると、100%の状態にはまだまだ程遠いと言える。本人も試合後に基本的には8割程度の力だったと話しており、これから更にスピードアップしていくことが考えられる。大谷翔平(エンゼルス)が3年夏にマークした高校生歴代最速の160キロを更新する可能性も高いと言い切れるだろう。

 そんな佐々木のボールの凄さを物語るシーンがこの試合でもあった。3回の先頭打者の2球目に投じたストレートは7番を打つ右打者の福田真夢(3年)のインハイに抜けたが、福田はそれをスイングしてそのボールが頭部を直撃したのだ。これが前述した3回の先頭打者の不運な死球である(本来、投球が体に当たっても打者がスイングしたと見られれば空振りとなる)。打者は速いボールを見慣れていないわけではなく、全国でも指折りの強豪校である作新学院で2年からレギュラーを務めている選手である。そんな高いレベルのチームの打者でも頭に当たるようなボールを振ってしまうくらい佐々木のボールは規格外ということが言えるだろう。

 まずスピードに焦点を当てたが、佐々木の凄さはそれだけではない。この日投じた変化球はスライダーが多かったが、打者の手元で鋭く変化し、特に右打者の外角へのコントロールは昨年夏とは比べ物にならないほど向上していた。作新学院の福田が頭部のボールをスイングしたと書いたが、その前のボールは外角いっぱいのスライダーであり、その意識があったからこそ内角のストレートに反応が遅れたという見方もできる。また左打者の外に沈むチェンジアップのブレーキも抜群。この日はあまり投げなかったが、140キロを超えるフォークボールもとても高校生が投げるレベルのボールではない。この冬で身長が1cm伸びて190cmとなり、体重も5kgアップして体つきは一回り大きくなった。そしてその長身を持てあますことなく使いこなせるセンスは大谷やダルビッシュ有(カブス)に通じる大きな長所である。

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どこまで進化を遂げるのか…