大船渡・佐々木朗希(撮影・西尾典文)
大船渡・佐々木朗希(撮影・西尾典文)
大船渡・佐々木朗希(撮影・西尾典文)
大船渡・佐々木朗希(撮影・西尾典文)

 それは異様な光景だった。

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 3月31日、作新学院と大船渡の練習試合が行われた矢板運動公園野球場に日米合わせて18球団、45名のスカウトがつめかけたのである。球場に訪れたのはスカウト陣だけではない。各スポーツ紙の記者、ファンに加えて地上波のテレビカメラまで訪れる騒ぎとなったのだ。お目当ては今年のドラフト、最大の目玉である大船渡の佐々木朗希の今シーズン初登板である。しかし高校生の練習試合にこれだけの関係者が訪れるのは異例中の異例といえるだろう。それだけ佐々木の注目度の高さがうかがえる。そして佐々木はその期待に応えて素晴らしいピッチングを披露したのだ。

 注目の立ち上がり、先頭打者を146キロのストレートでセカンドフライに打ち取ると、続く2番打者はスライダーを打たせて1球でセンターフライ。そして昨年夏の甲子園にも主力として出場した3番の石井巧(3年)にはスライダー2球で簡単に追い込むと、最後は153キロのストレートで三球三振に仕留めて見せたのだ。この時点で既にスタンドはどよめきが広がり、勢ぞろいしたスカウト陣からはスピードガンに表示された数字を確かめ合う会話がそこかしこで聞かれた。

 続く2回は先頭打者の横山陽樹(2年)にスライダーをライト後方に運ばれるスリーベースを浴びていきなりピンチを迎えたが、そこからのピッチングが圧巻だった。続く3人の打者にチェンジアップ、ストレート、スライダーと異なる球種を決め球に三連続三振を奪い、ストレートはこの日最速となる156キロをマークしたのだ。続く3回は不運な死球と自らのピッチャーゴロの処理ミスから1点を失ったものの、最終的には3回を投げて被安打1、1失点、6奪三振と上々の仕上がりと言える内容で今季初登板を終えた。

改めてこの日投じたストレートのスピードを振り返ると下記の数字となる。

1回:146キロ 147キロ 152キロ 146キロ 153キロ
2回:153キロ 151キロ 147キロ 151キロ 156キロ
3回:148キロ 148キロ 154キロ 148キロ 148キロ 155キロ

※数字は著者計測

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西尾典文

西尾典文

西尾典文/1979年生まれ。愛知県出身。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究し、在学中から専門誌に寄稿を開始。修了後も主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間400試合以上を現場で取材し、AERA dot.、デイリー新潮、FRIDAYデジタル、スポーツナビ、BASEBALL KING、THE DIGEST、REAL SPORTSなどに記事を寄稿中。2017年からはスカイAのドラフト中継でも解説を務めている。ドラフト情報を発信する「プロアマ野球研究所(PABBlab)」でも毎日記事を配信中。

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並外れた佐々木のポテンシャル