彼らはごく最近、監督から「おい、分かってんだろうな」と脅しに近い叱咤激励を受けている。ノムさんが「一人のロートル選手を立ち直らせるのに、何人の有望株を見捨ててしまったことか」と嘆くように、見極めに失敗すれば、被害は主力選手に及び、非難の矢面に立たされる。だが問題選手ほど大化けしやすい。復活すれば「隠し球」成功だろう。だからこの5人の短期投入は「カンフル剤」でもあり「劇薬」でもある。

 次に「秘策」。丸佳浩の加入で巨人は緒方孝市監督が企業秘密にしていたプレーブックを獲得した。この収穫は大きい。原はこれをベースに「秘策」を練った。その答えが「足の連携」だ。かつて広島が弱小球団から這い上がった戦法を、原は「模倣」している。大砲不在のピストル軍団を、古葉竹識監督は機動力で巨人を翻弄してリーグ優勝に導いた。原が描いた秘策は、お家芸を忘れている広島を追い落とす「倍返しの足攻術」なのだ。

 鈴木はコーチ就任以来、広島の膨大な画像データを調べ上げた。すでに広島の連携守備の死角に気付いたはずだ。広島の弱点はサードにあると読める。巨人ベンチの手応えはどうなのか。「……」直撃しても鈴木は寡黙に笑うだけだ。原野球が広島戦で成功する秘策は、鈴木の大学ノートにある。(文・吉 元晴)