■「I am not ABE」の紙フリップは安倍政権の圧力への抗議

 私は、3月27日の最後の出演に際して、もう一度1月のメッセージを視聴者に伝えたいと考えた。言葉だけでは、はっきり人々の記憶に残らないので、「I am not ABE」と書いたA3の紙を二つ折りにして密かにスタジオに持ち込んだ。オンエア中にそれを開いて……。
あとは、皆さんご存知の展開だ。

 多くの人が誤解しているようだが、私が、あの紙を出したから、報ステをクビになったのではない。官邸の圧力でクビになることがわかったので、抗議の意味であの紙を出したのだ。

 あの抗議行動から今週3月27日でちょうど4年になる。今回わざわざこの話を出したのは、望月記者への菅官房長官による圧力を見ていて、あの時のことを思い出したからだ。望月記者に対する官邸のバッシングは並大抵のものではない。私が記憶している限り、14年から15年にかけての私を含めた報ステ関係者への圧力、15年から16年にかけての岸井成格TBS News23アンカーへのバッシング、17年から18年の前川喜平元文部科学事務次官への攻撃以来の最強硬策に出ているように見える。

 裏を返せば、望月記者の行動が、安倍政権にとって非常に大きなダメージになるとわかっているのだ。そういう時に採る彼らの手法は、必ず個人攻撃である。その人の信用を落とすことによって、いかに素晴らしい記事やコメントを出しても、その内容以前に、人格が信頼できないという理由で人々が読まない、あるいは見ないようにするという作戦である。

 今回も、望月は嘘つきだという趣旨の情報がネット上には溢れている。嘘つきが書く記事や発言であれば、人々は最初から読む価値がないと考えて関心を持たないから、いちいち望月氏の発言や記事に対する反論をする必要がない。特に、政府側が、痛いところを衝かれて反論できない時には、これが一番有効な防御策になる。

 一連の安倍政権による異論封じと少数者・弱者を叩き潰す姿勢は、日本のイメージを著しく傷つけている。

次のページ
安倍総理と私たち日本人は違う