「練習中から、これくらいの調子ならこれくらいのボールは投げられる、という感覚は少しずつわかるようになった。そのレベルまでコンディションを上げることができれば大崩れしない。俗に言うところの試合を作れれば、あとは周囲が助けてくれる。それを1年間コンスタントにできたことが結果につながったのだとは思う」 と、現在の心の持ちようを語った大瀬良大地は今や右のエースとなった。ルール改正に伴った投球フォーム改造などがうまくはまったこともあった。

「もちろん野球選手として常に技術を磨いたり研究したりしている。でも長いシーズン、コンスタントにすべてを出すのも難しい。そういう意味でも技術、コンディションとメンタルのバランスが良くなっていると思う。それが勝者のメンタリティかどうかはわからない。だけど安定した投球をできるような感覚は少しずつわかるようになった。それがマウンド上での精神状態にも良い影響を与えているのは間違いない」

 誰もが認める「いい人」で「優しすぎる」とも言われた右腕に、自信という大きな武器が備わった。

「ドアマットチーム」という言葉がある。建物入り口にあり誰もがそれを踏んで室内に入ることから派生し、確実に勝ちを見込める相手、弱小チームのことだ。 数年前までのドアマットチーム、広島は生まれ変わった。我慢を重ね、再び常勝チームに返り咲いた。選手個々、チーム全体としての強いハート、勝者のメンタリティができあがり始めたからではなかろうか。

「勝てるチームは投打のバランスが取れていることが重要。例えば僕の場合、調子が悪ければ、打線が何点は取ってくれるだろうからそこまで踏ん張ろう、と考えられるようになった。そういう意味でも本当に野手の方々に感謝している。仮にゼロに抑えても点を取れないと勝てない。チーム全体が、勝負どころというか、勝てるパターンをつかみつつあるのかもしれないですね」

 最後に大瀬良は語ってくれた。今年も広島は大きな自信を持ってペナントレースに挑み確実に勝利を積み重ねるだろう。(文・山岡則夫)

●プロフィール
山岡則夫
1972年島根県出身。千葉大学卒業後、アパレル会社勤務などを経て01年にInnings,Co.を設立、雑誌『Ballpark Time!』を発刊。現在はBallparkレーベルとして様々な書籍、雑誌を企画、編集・製作するほか、多くの雑誌、書籍やホームページ等に寄稿している。Ballpark Time!オフィシャルページにて取材日記を不定期に更新中。現在の肩書きはスポーツスペクテイター。