紀平梨花選手=2018年12月6日撮影 (c)朝日新聞社
紀平梨花選手=2018年12月6日撮影 (c)朝日新聞社

 さいたまスーパーアリーナで開催される世界フィギュアスケート選手権。3月20日にSP、22日にフリーが行われる女子は今季のここまでの戦いを見る限り、初出場だったGPファイナルを含めて今季の国際大会を6連勝している紀平梨花が頭ひとつ抜け出している状況だ。

【写真】笑顔を見せた紀平ら女子シングル代表の3人

 その大きな力となるのがトリプルアクセル。まだSP1本とフリー2本のトリプルアクセルをすべて成功したことはないが、高得点を出した試合では1本失敗してもそれを引きずらずに2本は成功している。また大技であるトリプルアクセルに集中するために他のジャンプへの意識が少し薄くなるようなこともなく、たとえトリプルアクセルでミスをしても他のジャンプはノーミスでこなす安定感があり、SPはミスをしても70点前後の得点を獲得と、フリーで逆転できる範囲には必ず付けていることだ。

 一方、平昌五輪優勝のアリーナ・ザギトワ(ロシア)はGPシリーズではミスが出て得点を伸ばせない試合が続き、ロシア選手権ではジュニアの後塵を拝して5位。またヨーロッパ選手権では2位にはなったが198.34点と少し落ち込んでいる。それでもシーズン初戦のネーベルホルン杯では今季世界最高の238.43点を出している実力は侮れない。シーズン前半戦の伸び悩みは、まだ新プログラムに慣れきっていないことや体の不調もあっての事だろう。1月末のヨーロッパ選手権から世界選手権までは時間もあり、その中でフィジカル面も含めてじっくり立て直してきてくるだろうだけに優勝争いは230点台後半の戦いになることも十分考えられる。

 そんな中での紀平の懸念は初めて経験する、これまでとは格段に違う大舞台でなおかつ日本開催で優勝を期待されるプレッシャーとどう戦うかということにある。ザギトワがSPで80点前後の得点を出してくる可能性が高いことを考えれば、紀平もそこではトリプルアクセルをキッチリ成功させてGPファイナルの82.51点と同等な得点を出し、ザギトワにプレッシャーをかけなければいけないだろう。緊張感も高まるSPをどうこなし、フリーにどういう精神状態で挑めるようにするかというのがふたりの戦いの勝負のカギになる。

次のページ
宮原知子と坂本花織も上位進出候補