混入された物質自体が人体に有害な場合もあるが、問題はそうした物質がコカインと組み合わさることで相乗的に毒性が高まることだ。レバミゾールの場合、白血球の減少や皮膚の壊死が確認されている。

 近年の傾向としては、「フェンタニル」が混入されたものが出回っていることも、コカインが危険視される一因だ。これは2016年に米ミュージシャン、プリンスが死亡した原因となった麻酔薬で、“麻薬の王”と呼ばれるヘロインの30倍から50倍も強力なもの。米国疾病予防管理センターによると、米国でのコカイン摂取による死亡事故は、2016年の約1万件から2017年には1万4556件と急増しているが、このフェンタニル入りコカインの氾濫との因果関係が指摘される。

 世界規模で、コカインによる汚染は拡大している。日本で暮らす限り、確かにコカインは縁遠い薬物かもしれない。しかし、東京オリンピックが迫り、海外との交流がますます増えている昨今、偶発的に遭遇する可能性は低くはない。だからこそ、違法薬物に対する正しい知識を身に着け、自衛に努めてもらいたい。麻薬の売人に、顧客の健康に気を使う義務もなければ義理もないのだから。(取材・文/小神野真弘)