横浜は3回1死二塁、鈴木尚典の中前タイムリーで同点に追いつくも、なおも1死一塁でブラッグスが三ゴロ併殺に倒れ、3イニング連続併殺というちぐはぐぶり。

 その後も6回1死一、二塁で谷繫元信が二ゴロ併殺、7回1死一塁で波留敏夫が三ゴロ併殺、8回1死一塁で駒田徳広が遊ゴロ併殺。ついに70年の阪急、95年の巨人と並ぶ史上ワーストタイとなった。

 これだけ併殺の山を築いたら、勝利の女神に見放されても不思議のないところだが、なぜか試合は5対2で横浜の快勝。決勝点も1対1の4回、ローズが左中間に打ち上げた飛球を町田公二郎、前田智徳が譲り合って三塁打にしてしまうイージーミスに乗じて、谷繫の内野ゴロの間に挙げた貰い物だった。

 野村に要所を締められ、スミイチが続いていた広島は、1対4の8回に金本知憲が左越えソロを放ったが、反撃もそこまで。ソロ本塁打2本の2点だけで終わった打線に、三村敏之監督は「前半あれだけ併殺を取ったら、流れをこっちに持ってこなくちゃいけないのに……」と呆れ顔。

 一方、6併殺を食いながら勝った横浜・大矢明彦監督は「やることみんな失敗しちゃって、勝って不思議な試合だったね」と信じられないような表情だった。

 この日の敗戦で、広島は最大11.5ゲーム差をつけていた2位・巨人にゲーム差なしの1厘差まで迫られてしまった。巨人の“メーク・ミラクル”を決定的にした試合とも言えるだろう。

 同じ6併殺でも1回から6回まで6イニング連続併殺という芸術的な(?)珍記録が生まれたのが、95年4月26日の近鉄vs日本ハム(東京ドーム)。

 1回、日本ハムは先頭打者の鈴木慶裕が中前安打で出塁したが、渡辺浩司が三ゴロ併殺。ここから負の連鎖とも言うべき連続イニング併殺がスタートする。

 2回は田中幸雄が右前安打のあと、マッキントッシュが遊ゴロ併殺打。3回は1死から広瀬哲朗が右前安打で出るが、鈴木が遊ゴロ併殺打。4回も1死からデューシーが中前安打を放つも、田中が二ゴロ併殺打。5回も1死から井出竜也が左前安打で出塁したが、上田佳範が遊ゴロ併殺打。ついに58年の国鉄、70年の阪急、79年のヤクルトが記録した5イニング連続併殺打(阪急は6イニング連続)に並んだ。

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これだけ拙攻を繰り返したのに…