中日時代の宇野勝選手=1982年6月29日撮影 (c)朝日新聞社
中日時代の宇野勝選手=1982年6月29日撮影 (c)朝日新聞社

 2019年シーズン開幕を間近に控え、今季の展望に思いを巡らせる今日この頃だが、懐かしいプロ野球のニュースも求める方も少なくない。こうした要望にお応えすべく、「プロ野球B級ニュース事件簿」シリーズ(日刊スポーツ出版)の著者であるライターの久保田龍雄氏に、80~90年代の“B級ニュース”を振り返ってもらった。今回は「珍併殺編」だ。

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 滅多にお目にかかれない1イニング2併殺打が記録されたのが、1989年6月20日の広島vs中日(ナゴヤ)。

 4対4の8回、中日は先頭の宇野勝が中前安打で出塁したが、仁村薫の送りバントが捕ゴロになり、達川光男の送球で宇野は二封。ところが、ショート・高橋慶彦から一塁に転送された際に、タイミングはアウトだったにもかかわらず、一塁カバーのセカンド・正田耕三が落球したことから、併殺打と正田のエラーが記録された。

 そして、1死一塁で次打者・小松崎善久は遊ゴロ併殺。かくして、64年6月7日に中日が大洋戦で記録して以来、セリーグでは史上2度目、両リーグでは3度目の1イニング2併殺打の珍事となった。

 試合は延長10回無死一塁、落合博満の中越え二塁打で中日がサヨナラ勝ちしたが、星野仙一監督は8回の拙攻が気に入らなかったとみえ、「もっと早くケリをつけないかん。それだけや」と不機嫌そのもの。落合のサヨナラ打と10回を3者凡退に切って取った郭源治の好救援には、ひとことも触れなかった。

 ちなみに2011年7月15日の広島vs中日(ナゴヤドーム)でも、3回にセリーグ史上3度目の1イニング2併殺打が記録され、今度は中日が22年前のお返し。3試合とも中日絡みという偶然が面白い。

 プロ野球タイの6併殺打。こんな呆れるばかりの拙攻を演じたチームがなぜか勝ってしまう珍事が起きたのが、96年8月18日の横浜vs広島(福山)。

 横浜は1回1死満塁の先制機にローズが二ゴロ併殺に倒れ、無得点。これがすべての始まりだった。

 その裏、広島は緒方孝市の先頭打者本塁打で1点を先行。これに対し、横浜も2回に1死一、二塁のチャンスをつくるが、野村弘樹が遊ゴロ併殺に打ち取られ、またしても無得点。

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久保田龍雄

久保田龍雄

久保田龍雄/1960年生まれ。東京都出身。中央大学文学部卒業後、地方紙の記者を経て独立。プロアマ問わず野球を中心に執筆活動を展開している。きめの細かいデータと史実に基づいた考察には定評がある。

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