コンヤスポル戦のロスタイムを含めたラスト20分間も、香川が入ったことで明らかに攻めの推進力が高まり、相手ゴールに詰め寄る回数が増えた。しかも、最後の決勝ゴールは追いすがるDFを強引にドリブルでかわして左足で振り抜くという強烈な個の力を見せた形だった。ロシアで8強の壁に阻まれた時から「局面を打開してゴールを奪える個の力が必要」と口を酸っぱくして言い続けてきた香川は、フィニッシャーとしての自分に徹底的に磨きをかけている。その姿勢と意識の高さは森保ジャパンにも必ずプラスに働く。むしろ守備負担の少ないジョーカーとしての出場の方が、潜在能力の高さを遺憾なく発揮できる可能性が高い。

 つまり、ここからの香川に求められるのは、「スタメン」と「ジョーカー」の二刀流で行ける準備をしっかりすることだ。ロシアで本田圭佑(メルボルン)、アジアカップでも乾貴士(アラべス)らが担った「ベンチから相手に脅威を与える仕事」を彼が納得し、実践できるようになれば、森保ジャパンの戦い方の幅は確実に広がる。

 新生代表は昨年9月のチーム発足時から南野や堂安ら若手を主力に据えてきた分、ロシア組の原口元気(ハノーファー)や乾は悔しさや焦燥感を味わう格好になった。半年遅れて満を持して代表合流する香川も同じ境遇に陥るかもしれないが、どんな状況にも耐えて、新たな代表で自身の存在価値を再認識させていくことに集中するしかない。その記念すべき一歩となるであろう3月2連戦の一挙手一投足が今から非常に楽しみである。(文・元川悦子)