阪神・藤浪晋太郎投手 (c)朝日新聞社
阪神・藤浪晋太郎投手 (c)朝日新聞社

 ソフトバンクとのオープン戦(3月2日)で、阪神・藤浪晋太郎は腕の位置を従来より下げたスリークォーターで投げていた。開幕まで一カ月を切った時期にフォーム改造は異例の荒療治だ。右打者へのすっぽ抜けが多いため矯正できるかが焦点だったが、ソフトバンクは右打者3人にいずれも左の代打を送った。露骨な戦法だったが、オープン戦で死球での故障を回避したい工藤公康監督の心情は理解できる。右打者の起用を避けたのはソフトバンクだけではない。2月17日に練習試合で対戦した日本ハムは左打者を8人並べ、2月24日の中日も6人が左打者だった。右打者は3人だけだったが、阿部寿樹は頭部付近の球にのけぞり、木下拓哉は死球を受けた。今後のオープン戦でも相手球団は左打者を送り込むだろう。藤浪は右打者と対戦機会がほとんどなく課題が解消されないまま、公式戦に入る可能性が高い。他球団のあるコーチは「オープン戦だから右打者を外せるけど、公式戦に入ったら主力の右打者はなかなか外せないよ。かといって打席に立たせて死球で長期離脱となったらダメージが大きい。他の球団も頭を悩ませるんじゃないかな」と複雑な表情を浮かべていた。

 広島は菊池涼介、鈴木誠也、バティスタ、長野久義、ヤクルトは山田哲人、バレンティン、巨人坂本勇人岡本和真、ゲレーロ、陽岱綱、DeNAはロペス、ソト、宮崎敏郎、中日はビシエド、平田良介、福田永将と各球団に主軸を打つ右の強打者がそろっている。活躍してもらわなければいけない選手たちだけに、藤浪との登板試合もスタメンを外れるのは考えにくい。一方で、「藤浪が投げる試合は打席に立ちたくない」と漏らす選手も。何より藤浪の精神状態が気がかりだ。オープン戦では投球練習で右打者の方にボールが抜けただけで、球場がどよめいた。「右打者に投げられない状況で不安を抱えたままの状況なら、シーズンに入ってマウンドに上げない方がいい」と外部から指摘する声もある。

 阪神は二遊間も定位置がまだ固まっているように見えない。藤浪の起用法を含め、課題が山積する中で矢野燿大監督の手腕が注目される。(春日哲也)