「R-1」「M-1」の2冠を達成した霜降り明星の粗品 (c)朝日新聞社
「R-1」「M-1」の2冠を達成した霜降り明星の粗品 (c)朝日新聞社

 ピン芸人ナンバーワン決定戦「R-1ぐらんぷり2019」はお笑いコンビ「霜降り明星」の粗品が栄冠を勝ち取った。昨年はコンビで「M-1グランプリ」で優勝しており、「M-1」と「R-1」をダブルで取るという史上初の偉業も成し遂げた。

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「M-1」優勝翌日、「霜降り明星」がホームグラウンドとしている大阪・難波の「よしもと漫才劇場」を上方漫才協会会長として管轄する漫才コンビ「中田カウス・ボタン」のカウスに話を聞いたが、とりわけ粗品を絶賛していた。今回の粗品の戦いぶりを見て、その時のカウスの言葉がくっきりと浮かび上がってきた。

「粗品くんのツッコミは的確そのもの。無駄ゼリフが一切ない。短い言葉でボケを立てていく。これを5~6年のコンビ歴でやるのは大したものです。相方のせいやくんがまごついたとしても、それを見逃さずに突っ込んで、それも笑いにする。実にシャープで、ツッコミとして、早くも一つの形を確立している」

 フリップ芸という、いわば“ありふれたネタ”の中に、自らのすさまじいポテンシャルをぶち込み、逆に他者との差を見せつける。カウスが評したように、キャリアに似つかわしくないスキルをこれでもか発揮しての優勝となった。

 今回は例年にも増しての激戦となったが、最終決戦で粗品と同点にもつれ込み、存在感を見せたのがお笑いコンビ「セルライトスパ」の大須賀健剛だった。決勝を前に、大須賀に話を聞く機会があったが、その時から印象深い話をしていた。

 今年の元日未明に放送された日本テレビ系「ぐるナイ おもしろ荘2019 若手にチャンスを頂戴!今年も誰か売れてSP!!」でコンビで準優勝し、大会前から注目が集まってもいたが、実はその時点で変化が訪れていた。

 昨年8月に第一子となる長女が誕生。決勝1本目のネタは赤ちゃんをあやしながら小声であらゆる思いを吐露するというものだったが、これはまさに子育ての中で生まれたものだった。さらに、人の親になり、これまで以上の責任感が日々の生活も変えた。

「僕、将棋が大好きで、ずーっとやっている将棋のアプリがあるんです。ただ、子どもの写真を携帯電話の待ち受けにしてから、その待ち受けを見ると『あ、ダメだ』と思って、将棋アプリをスッと消して、ネタを書くメモ帳ブロックに飛ぶようになりました。親になっての、そういった少しずつの変化、積み重ねが『おもしろ荘』にもつながったのかもしれません。そして、本当にリアルな話、『おもしろ荘』以降、見てくださる方々も期待して見てくださる空気を感じる。娘ができたことで幾重にも変わりましたし、どこまでも娘に感謝です」

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中西正男

中西正男

芸能記者。1974年、大阪府生まれ。立命館大学卒業後、デイリースポーツに入社。芸能担当として、故桂米朝さんのインタビューなどお笑いを中心に取材にあたる。取材を通じて若手からベテランまで広く芸人との付き合いがある。2012年に同社を退社し、井上公造氏の事務所「KOZOクリエイターズ」に所属。「上沼・高田のクギズケ!」「す・またん!」(読売テレビ)、「キャッチ!」(中京テレビ)、「旬感LIVE とれたてっ!」(関西テレビ)、「松井愛のすこ~し愛して♡」(MBSラジオ)、「ウラのウラまで浦川です」(ABCラジオ)などに出演中。著書に「なぜ、この芸人は売れ続けるのか?」。

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