そういった例を減らすための取り組みとしては近年の大学野球にヒントがあるのではないだろうか。2017年の明治神宮大会で優勝を果たし、昨年のドラフトでは松本航(西武1位)、東妻勇輔(ロッテ2位)と二人の上位指名選手を輩出した日本体育大は2015年から「体育会イノベーション」と題して極端な上下関係を撤廃し、雑用などは上級生が担当し、1年生は環境に適応することを優先したのだ。これは帝京大のラグビー部を参考にしたものとのことだが、日本体育大の野球部もその後は安定した成績を残し、先述したように大学日本一にも輝いている。高校球界でもこのような取り組みが増えることがスーパー中学生を潰さないことにもつながるのではないだろうか。

 森木について言うと、中学時代に指導を受けていた浜口佳久監督も同じタイミングで高校の監督に就任することになり、自分のことをよく知る指導者に継続して見てもらえるという点は非常に大きい。軟式から硬式にボールが変わるという点もあるが、プロ野球の世界でも投手に限れば軟式野球出身の選手が活躍している例も多い。投手という故障の多いポジションなだけにくれぐれも無理は禁物だが、高校球界でも中学時代に見せたような圧巻のピッチングを大舞台で披露してくれることを期待したい。(文・西尾典文)

●プロフィール
西尾典文
1979年生まれ。愛知県出身。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間300試合以上を現場で取材し、執筆活動を行っている。

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西尾典文

西尾典文

西尾典文/1979年生まれ。愛知県出身。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究し、在学中から専門誌に寄稿を開始。修了後も主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間400試合以上を現場で取材し、AERA dot.、デイリー新潮、FRIDAYデジタル、スポーツナビ、BASEBALL KING、THE DIGEST、REAL SPORTSなどに記事を寄稿中。2017年からはスカイAのドラフト中継でも解説を務めている。ドラフト情報を発信する「プロアマ野球研究所(PABBlab)」でも毎日記事を配信中。

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