先日は、僕のお隣りに座ってた、僕より少し年配の印象の男性が、新聞を読みながら、ずっーと「そこまでするか」と言っていました。もちろん、お一人です。何度も何度も「そこまでするか」と、少し怒った口調で言うのです。なんとなくそう聞こえるというレベルではなく、わりとハッキリと「そこまでするか」と発音するのです。新聞に何が書いてあるのか気になって仕方ありません。よほど、「一体、どこまでしたんですか?」と聞こうかと思いましたが、さすがにそれは我慢しました。

 他にも、姑さんへの愚痴を友人に吐き出す女性や、片思いの女の子へのアプローチを男友達に相談する男子高校生、お酒が入って仕事への姿勢を仲間に熱く語る作業服の男性(ごめんなさい、盗み聞きしてる訳ではないのですが、どうしても聞こえてきてしまい…)などなど、ファミレスには本当に色んな人間模様が渦巻いています。そして、こうやって思いを確認したり、発見したり、共有したり、吐き出したりできる場所は、とっても世の中に貢献してるなぁと思いつつ、これからもファミレスに通う日々は続きます。(文/佐藤二朗)

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佐藤二朗

佐藤二朗

佐藤二朗(さとう・じろう)/1969年、愛知県生まれ。俳優、脚本家、映画監督。ドラマ「勇者ヨシヒコ」シリーズの仏役や映画「幼獣マメシバ」シリーズの芝二郎役など個性的な役で人気を集める。著書にツイッターの投稿をまとめた『のれんをくぐると、佐藤二朗』(山下書店)などがある。96年に旗揚げした演劇ユニット「ちからわざ」では脚本・出演を手がけ、原作・脚本・監督の映画「はるヲうるひと」(主演・山田孝之)がBD&DVD発売中。また、主演映画「さがす」が公開中。

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